インタラクティブ動画

スマートフォンやインターネット環境の普及に伴い、動画を使ったマーケティングも広く浸透してきました。特に近年では、ユーザーに能動的な参加を促す「インタラクティブ動画」に注目が集まっています。

双方向コミュニケーションを実現するインタラクティブ動画はエンゲージメントが高く、コンバージョンにつなげやすいという特徴があります。しかし、ユーザーの興味を引く「仕掛け」や活用シーンの選択を誤ると十分な効果は得られません。

そこで今回は、インタラクティブ動画の活用方法やメリット、作り方などについて、詳しく解説していきます。

インタラクティブ動画とは

インタラクティブ動画とは、「クリック」や「タップ」などのアクション要素を取り込んだ動画です。従来の動画と異なり、ユーザーが能動的にコンテンツへ参加できるという特徴があります。

近年ではユーザーの選択によってストーリーが分岐するインタラクティブ動画も多く、活用次第では一つの動画で多くのユーザーニーズを満たすことも可能です。

インタラクティブが登場した背景

スマートフォンの普及や5Gによる通信の高速化・大容量化で動画の視聴が日常化している近年では、企業にも動画マーケティングへの注力が求められています。すでにYouTubeなどを使った動画マーケティングは行われていますが、一般的な動画広告は基本的にマスマーケティングにしか活用できません。価値観の多様化で求められているOne to Oneマーケティングの展開は大変困難です。

しかし、インタラクティブ動画を活用すれば、ユーザーとの「双方向コミュニケーション」が実現します。「一方通行」の宣伝しかできない従来の動画広告とは異なり、リッチなコンテンツを求めているユーザーとの親和性が高いため、動画マーケティングの大きな課題「動画再生中の離脱」を防ぐことも可能です。

「YouTube」や「Instagram」「TikTok」などのSNSだけではなく、「YouTube」や「Netflix」といった多彩なプラットフォームに対応しているのもインタラクティブ動画が注目されている理由の一つでしょう。

海外ではすでに数多くの企業がインタラクティブ動画を導入していますが、日本国内でも大手企業を中心にLPやSNS広告、対面チャネルのDX化などで活用が進んでいます。

インタラクティブ動画の活用の手段

インタラクティブ動画の活用シーンは、主に「広告」と「コンテンツ」の2つに分けられます。それぞれの活用手段を詳しく見ていきましょう。

インタラクティブ動画の活用手段
  • ・広告として活用する
  • ・コンテンツとして活用する

広告として活用する

従来の動画コンテンツはユーザーが受動的に視聴するだけなので「途中で離脱される」という問題を抱えていますが、クリッカブルな領域を動画内に設置できるインタラクティブ動画は、ユーザーに選択肢を与えて自発的なアクションを促せます。ユーザーは「広告であることを忘れて思わず最後まで見てしまう」のです。

視聴完了率の向上はそのままCVRの改善へと結びつくため、従来の動画広告よりも高い成果が期待できます。また、インタラクティブ動画は、一般的な動画広告よりも視聴時間と接触回数が増えるため、エンゲージメントを高める効果もあります。

コンテンツとして活用する

インタラクティブ動画を使えば、ストーリー性を伴った企業独自の世界観を演出することも可能です。さまざまな仕掛けを駆使したエンターテイメント性の高い動画は、製品やサービスの内容を深く伝えながら他社との差別化も実現します。

インタラクティブ動画での効果の出し方

インタラクティブ動画は、主に以下のようなシーンで効果が期待できます。

インタラクティブ動画の効果が出る場面
  • ・リードの獲得
  • ・営業活動
  • ・採用活動
  • ・プロモーション

    ただし、インタラクティブ動画を導入するだけで効果が現れるわけではありません。そこでここからは、各シーンでの活用方法や効果の出し方を詳しく解説していきます。

    リードの獲得

    動画内に「クリックするだけで資料がダウンロードできる」「ユーザーの選択次第で簡単に自社サイトへ移動できる」などの仕掛けを施せば、ユーザーは思わず「参加」したくなるため、従来の動画をよりもリード獲得に大きな効果を発揮します。

    認知拡大

    操作性が高いインタラクティブ動画はユーザーの印象に残りやすいため、自社ブランドや製品の認知拡大にも向いています。ただし、認知拡大に使う場合は利用者の多いプラットフォームを選択しなければいけません。

    営業活動

    インタラクティブ動画を使えば、ユーザーが自ら「トーク動画」と「資料」を切り替えて視聴できる仕掛けを施せます。「資料」の動画に「目次」を設置して、動画内の気になるパートへ簡単に移動させることも可能です。

    動画再生中に「お問い合わせボタン」を表示したり、動画終了時に「問い合わせフォームへのリンク」を表示したりすれば、視聴中・視聴後を問わずユーザーをシームレスにフォームへと導けるでしょう。

    商談後にインタラクティブ動画を送付して、製品やサービスのイメージを共有しやすくすることも一つの方法です。送付した動画のクリック数や閲覧数を解析して顧客の興味度を可視化すれば、営業の成果を客観的に判断できます。

    インターネットの普及や新型コロナウイルスの影響によって対面での営業は減少傾向にあるため、インタラクティブ動画に限定した営業活動を検討してみても良いでしょう。

    採用活動

    応募者が「知りたいこと」はそれぞれ異なりますが、インタラクティブ動画を使ってさまざまな選択肢を提供すれば、各応募者に最適な情報を届けられます。

    動画のメインを社員のインタビューにし、その回答内容に応じて自社サイトへの導線を設置すれば、応募者が選択した社風や社内の雰囲気を具体的に伝えられるでしょう。

    若い世代には、ゲーミフィケーションを活用したインタラクティブ動画が効果的です。ゲーム性の高いインタラクティブ動画は興味と関心を提供できるだけではなく「先進的な企業である」という印象も与えられます。

    プロモーション

    ユーザーの印象に残りやすいインタラクティブ動画は、プロモーションにも向いています。導線を仕掛けたアニメーションを動画内に取り込んで訴求すれば、最後まで視聴してもらえる可能性も高まります。

    従来の動画広告は「取得できるデータに限りがある」「広告の改善が難しい」などの問題を抱えていますが、インタラクティブ動画を使えば下記のようなデータの取得も可能です。

    • ・ポップアップ滞在時間
    • ・総タッチ数
    • ・タッチされた個所と各所のタッチ回数
    • ・離脱場所
    • ・コンバージョン率

    最大のメリットは「ユーザーの興味度合いを可視化できる」という点でしょう。数値によって動画の問題点が明確になれば、一般的な動画広告よりもPDCAを回しやすくなります。

    インタラクティブ動画の活用事例

    ここからは、インタラクティブ動画の具体的な導入事例を紹介します。インタラクティブ動画の導入を検討している方や、どのように活用すれば良いのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

    大塚製薬株式会社「Brunch with the Girls」

    大塚製薬株式会社では、サプリメントのプロモーションにインタラクティブ動画を活用しています。

    内容はロサンゼルスで暮らす4人の女性が主人公というドラマ仕立てで、ユーザーが選択した女性のストーリーが展開する「ストーリー分岐タイプ」です。各ストーリーの中にも複数の選択肢があり、それぞれに結末が異なるため、何度でも視聴したくなります。

    サプリメントは美容や健康に役立つアイテムとしてさりげなく紹介され、動画の最後で「自分に適したサプリの診断サイト」へ誘導する趣向です。広告であることを感じさせずに商品の印象を残すことに成功している好例といえます。

    本田技研工業株式会社「The Other Side」

    HONDAが制作した「シビック」のインタラクティブ動画には、「映像にカーソルを合わせてクリックすると映像が切り替わる」という仕掛けが施されています。何もしない状態で映し出されている「A面」では娘を送る父親としての日常を、画面をクリックすると再生される「B面」では警察官としてのシリアルな一面を描くというストーリー性の高さも特徴です。

    1人の男性主人公を「父親」と「警察官」にスイッチングすることにより、シビックが幅広いシーンで使える自動車であることをアピールしています。パラレルにリンクしている「A面」と「B面」の動画で時間帯や車体の色を対照的にしている演出にも注目です。

    IKEA「Bedroom Habitats」

    IKEAでは、ショッピングサイトへのリンクを設置したインタラクティブ動画を制作しています。動画内に出現するショッピングバッグのアイコンをクリックすると商品詳細のポップアップが表示され、そこから商品購入ページへダイレクトに移動できる仕組みです。

    睡眠に関する悩みを抱えたカップルを主人公にストーリーが展開され、その解決策としてIKEAのベッド用品を紹介していくという「楽しさ」も感じられます。「スキップボタン」を使えばストーリーを飛ばせるため、商品の購入だけを目的としているユーザーのショッピングを邪魔することもありません。

    インタラクティブ動画の作り方

    専用のツールを使えば、専門的な知識がなくても本格的なインタラクティブ動画を制作できます。主なインタラクティブ動画作成ツールと、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

    インタラクティブ動画の制作ツール
    • ・riclink
    • ・TIG
    • ・YouTube
    • ・WIREMAX
    • ・eko Studio
    • ・DoGa

    riclink

    「riclink」は、PDFやWord、Excelファイルを動画内にアップロードできるツールです。SlackやChatworkとの通知連携にも対応しているほか、扱いやすいCMSも用意されています。

    BtoBに特化しているという特徴があるため、「クローズド配信機能」や「視聴ログデータの可視化」といったビジネスシーンで役立つ機能も豊富です。本格的なインタラクティブ動画の作成を検討している企業にも適しているでしょう。

    TIG

    「TIG」は、自社開発したトラッキングシステムを採用して、高精度なタグ付けができるインタラクティブ動画制作ツールです。

    映像を極力汚さないデザインを提供しているため、心地良いユーザー体験を手軽に提供することができます。用途や予算に応じて選べるSaaSモデルとEnterpriseモデルの2タイプが用意されていることも特徴です。

    YouTube

    インタラクティブ動画は「YouTube」を使って制作することもできます。Webサイトや別動画への誘導、アンケートなどを取り込んだ動画の作成も可能です。利用は無料なので、初心者や制作コストを抑えたいという方にも向いているでしょう。

    ただし、有償ツールに比べると機能面では劣るため、インタラクティブ動画作成の練習や、基本的な仕組みを理解したいときに使用するのがおすすめです。

    WIREMAX

    「WIREMAX」は、海外製のインタラクティブ動画制作ツールです。日本語表記はできませんが、他のプラットフォームにはないインタラクション編集機能が数多く用意されています。独自性のあるデザインの動画を制作したいという方や、他の動画と差別化を図りたいという方には最適なツールです。

    有料プランと無料プランが用意されていますが、両者の機能には大きな差があるため、無料で使用するなら他のプラットフォームを選択する方が良いでしょう。

    eko Studio

    「eko Studio」も海外製のインタラクティブ動画制作ツールです。動画の制作から公開まで無料で使えるツールでありながら、ストーリー分岐などの複雑な仕掛けも設置できます。

    分岐点を線でつなぐ電気回路のようなインターフェースに慣れている方なら扱いやすいでしょう。日本語表記はできませんが、テンプレートを使ったインタラクティブ動画の制作にも対応しているので、初心者の練習用としても使えます。

    DoGa

    「DoGa」は、ブラウザ上でインタラクティブ動画を作成できる国産のツールです。ストーリー分岐や登録フォームへの誘導、ポップアップの表示など、多彩な導線を仕掛けられます。

    正しいキーワードを入力しないと先に進めない仕掛けを駆使すれば、クイズのようなスタイルでユーザーの参加意識を高めることも可能です。使いやすい国産ツールを探している方もチェックしてみてください。

    まとめ

    動画視聴の日常化に伴い、インタラクティブ動画を使ったマーケティングの重要性も増してきています。しかし、活用シーンやユーザーのニーズに適したインタラクティブ動画を作成しなければ期待している効果は得られません。

    すでにインタラクティブ動画を導入している企業の事例などを参考にしながら、商品やサービスを訴求だけではなく、良質な体験を提供できる動画を作成したいところです。

    当社GROVEでは、お客様の目的や要望に合わせてYouTubeを含むSNSマーケティングに関するノウハウやハウツーを提供しています。SNS・動画マーケティングを始めるか迷っている方や、「動画を作ってみたものの、うまくいっていない」という方はぜひ当社GROVEに問い合わせください。