企業のソーシャルメディア活用事例

企業がソーシャルメディアを用いてマーケティングを行うことは、だいぶ一般的になってきました。しかし、「どのように運用していけば良いのか?」「注意点が気になる」といった疑問を持っている広報担当者もいるでしょう。

そこで今回は、企業がソーシャルメディアを運用するメリットと運用方法について解説します。

企業のソーシャルメディアの利用割合

総務省が2019年に発表した「平成30年通信利用動向調査」によると、インターネットを利用している企業のうち、SNSを活用している企業の割合は36.7%でした。業界別で見ると不動産が最も高く、次いで金融・保険業、卸売・小売業となっています。

一方で、製造業や運輸業界は、まだまだソーシャルメディアの利用が少ないです。これは、ソーシャルメディアが一般の人に対して宣伝効果を見込むため、BtoB企業の多い業界は、利用率が低いと考えられます。しかし、どの業界も2018年に比べると利用企業は増えており、傾向として今後も増えていくでしょう。

いつの日か、企業がソーシャルメディアを持っているのは当たり前となるかもしれません。そのため、今はまだ使われていない業界だからと安心せず、興味関心を持っておく必要はあると考えられます。

企業がソーシャルメディアを利用する目的

企業がソーシャルメディアを利用する目的はいくつかあります。たとえば、ブランディング向上や自社アピールなどが考えられます。しかし、その中でも特に重要なのは次の3点でしょう。

企業がソーシャルメディアを利用する目的
  • ・顧客への認知拡大
  • ・CS(顧客満足度)の向上
  • ・商品・サービスブランディング

今回は、この3つについて詳しく解説していきます。

顧客への認知拡大

企業がソーシャルメディアを利用する目的の一つに、顧客への認知拡大が挙げられます。スタートアップ企業やBtoB企業が、採用時に知名度を上げるために行うことも多くあります。

2017年と2018年を比較すると、「会社案内・人材募集」を目的にソーシャルメディアを使うと答えた企業が増えていることからも重要といえます。認知度が高い企業の方が、人材募集時に「知っている」ことを理由に、応募する人も増えるでしょう。

良い人材を採用したいのは、どの企業も同じです。そのため、多くの応募者がいればいるほど、採用できる可能性も高まります。

具体的な活用方法は、ソーシャルメディアで人材募集を行ったり、採用サイトで行ったりしている募集の宣伝、そして会社の中を知ってもらうために、新入社員の働いている様子の紹介やインターン研修生のインタビューの掲載などが挙げられます。特に、就活生向けにソーシャルメディアを活用すると、興味を持ってもらえるでしょう。

CSの向上

ソーシャルメディアの特徴の一つに、顧客からの意見をダイレクトに受け取れることが挙げられます。そこで企業が顧客からの不満を直接聞くために、ソーシャルメディアを活用するケースも見られるようになりました。これは、顧客の本音と言っても良い重要な情報です。

これまでは、コンタクトセンターでの対応や、消費者アンケート、リサーチ会社による市場調査といった手段が取られていましたが、ソーシャルメディアで顧客からのコメントやダイレクトメールから意見を受け取れます。

また、顧客にコメントを直接返信できるため、コミュニケーションを取ってくれたと喜ぶ人もいるでしょう。

商品・サービスブランディング

新商品やサービスを売り出すとき、ブランディングの手段としてソーシャルメディアを使うケースもあります。ソーシャルメディアを使い、商品やサービスの認知度向上を目的に利用することを考える企業は非常に多いです。

投稿を見たユーザーが内容に共感した場合、自動的に拡散してもらえる可能性もあるため、自分たちではリーチできていない人にも知ってもらえるかもしれません。

そのためには、どんな投稿をするか、コンテンツもしっかり検討する必要があります。特に、Instagram(インスタグラム)などの写真媒体は、ブランディングに適しており、化粧品やアパレルなどではブランディングの手段として使われることが多いです。

ソーシャルメディアにも特性があるので、商品やサービスによって使い分けると良いでしょう。

企業がソーシャルメディアを活用するメリット

企業がソーシャルメディアを活用するメリットには、次のものが挙げられます。それぞれについて詳しく解説していきましょう。

企業がソーシャルメディアを活用するメリット
  • ・広告費を削減できる
  • ・商品・サービスの向上につながる
  • ・ブランディングしやすくなる

広告費を削減できる

ソーシャルメディアを活用すれば、自社商品やサービスを無料で宣伝できます。

たとえば、雑誌やテレビなどの広告枠を購入して、アピールする際に必要な広告費用が必要ありません。もちろん、ソーシャルメディアにも広告はありますが、低予算から利用できるため広告費を大きく削減できます。

また、ソーシャルメディアを運用していく中でファンを増やすと、会社名やブランドを認知され、「この会社に入りたい」「このブランドに携わりたい」という人も出てくるでしょう。そんな人材を採用できれば、求人媒体の掲載費用も削減できますね。

そして、応募してくる人はブランドや会社のことを知っているので、自社にマッチしない人を採用するコストもなくなり、長い目で見れば、人件費の削減にもつながります。

ソーシャルメディアは、商品やサービスだけでなく、会社そのものやブランドの認知に効果があるので、上手に利用して、広告予算を削減しましょう。これは、企業がソーシャルメディアを活用する大きなメリットといえます。

商品・サービスの向上につながる

ソーシャルメディアは、一方的な発信ではなく双方向でのやり取りをできることが大きな特徴です。そのため、商品やサービスを利用した顧客からの声を直接聞くことができ、改善点や不満を拾えます。

また、その声を取り入れて、商品やサービスの向上につなげて、顧客満足度アップも可能です。ホームページや広告だけだと、顧客の声を直接拾うことはどうしても難しいものです。アンケートページやリサーチ会社を利用して収集していた費用の削減にもつながるでしょう。

ブランディングしやすくなる

企業が自社の商品やサービス、そして会社そのもののブランディングを行うためには、外部に対しての発信が重要です。そのとき、ソーシャルメディアを使えば低予算で大勢の人に対して発信ができ、ブランディングしやすくなります。

かつては多額の費用を使って広告を出稿したり、マスメディア関係者を集めたプレスパーティーを開いて新商品発売の告知をしたり、大きなイベントを開催したりしてブランディングしていました。これでは、中小企業にはなかなか実施は難しいですよね。

しかし、ソーシャルメディアを使えば、その心配がなくなります。中小企業でもブランディングをしやすい環境が整ったといえるでしょう。

企業がソーシャルメディアを活用するデメリット

反対に、企業がソーシャルメディアを活用するデメリットも見ておきましょう。事前に知っていれば、対策が立てやすくなります。

企業がソーシャルメディアを活用するデメリット
  • ・炎上する可能性がある
  • ・運用にリソースがかかる
  • ・KPIの設定が難しい

炎上する可能性がある

ソーシャルメディアで炎上してしまった場合、企業が炎上を止めることは不可能です。炎上が起きると売り上げを落とすだけではなく、多くの人から信頼を失ってしまう事態となり、大きな痛手となります。

そして、一度炎上してしまうと投稿を消したとしても、画像データを保持する人もいて、インターネット上に半永久的に残り、企業にとってはマイナスイメージがずっと付きまとう可能性も高いです。企業の炎上は、SNSの操作を誤って意図しない投稿をしてしまうケースや不適切な投稿などが挙げられます。

しかし、これらは事前に防止することは可能です。そのため、企業でソーシャルメディアを活用する場合は、マニュアルを設けると良いでしょう。企業として責任を取れない内容や事実が明確でないことを発信しないなどのルールを設けて、投稿前に内容チェックを数名で行うなど、しっかり対策をしておけば防げるでしょう。

それでも炎上してしまった場合は、状況を把握し冷静に誠実な対応をしてください。そのため、炎上したときの対応もマニュアル化することをおすすめします。

運用にリソースがかかる

ソーシャルメディアを運営するためには、人的リソースが必要です。すべて内製化すれば費用は掛かりませんが、通常の仕事だけでなくソーシャルメディアも対応するとなると、その人の負荷は上がります。

ソーシャルメディアは、運用を始めたらこまめに更新しなければ意味がありません。そのため、片手間でやっていると、通常業務が忙しくて更新できないことも考えられます。

社員がたくさんいれば分担できますが、社員の少ない企業の場合は、費用を使って外部への委託も検討すると良いでしょう。その場合、人的リソースだけでなく費用も必要です。

多くの企業では、~360万円の予算をソーシャルメディアに使っているというデータもあります。積極的に取り組むのであれば、予算を取る必要性があることも覚えておくと良いでしょう。

KPIの設定が難しい

ソーシャルメディアを運用する場合、社内でノウハウを持っている人がおらず、KPIの設定が難しいという声もしばしば耳にします。

KPIをフォロワー数にするのかエンゲージメント数にするのか、またはリーチ数にするのか、どうすれば良いのか迷ってしまいますよね。そのため、戦略の立てづらさもデメリットとして挙げられます。

そんなときは、競合となる企業のアカウントを数社ピックアップし、各社のファン数や「いいね」数などとの比較してください。競合と比較すれば、自社の立ち位置も把握できます。

企業のソーシャルメディアの活用事例

最後に、企業のソーシャルメディア活用事例を紹介します。8社を次のように目的別に分けて紹介します。

  • ・認知度向上
  • ・商品ブランディング
  • ・ダイレクトマーケティング
  • ・CS

    認知度の向上編

    まずは、認知度向上を目的にソーシャルメディアを活用した企業事例です。紹介するのは、次の3社です。

    • ・ANA
    • ・荒野行動
    • ・テレビ東京

    ANA

    ANAは、Instagram(インスタグラム)を使ってインスタ映えする飛行機と景色の写真を投稿しています。写真の色目や雰囲気は、ANAカラーに統一といった基本はもちろん、ストーリーズ機能を活用し、認知度の向上を目的に運営。インスタグラムだからこその使い方をしています。

    また、タグを使ってANAのアカウントをフォローしていない人にも投稿が届くようにしており、KPIは「リーチ数」を重視し、まずはANAを知ってもらおうとしています。さらに、投稿の良し悪しを見るため、「いいね」のエンゲージメントもカウント。

    国内だけでなく海外へのアピールも重視しており、日本の文化をフックにしたりANAが就航したりしている都市の紹介もしています。

    荒野行動

    荒野行動は、TikTokを用いて「#荒野行動」のハッシュタグを使った動画投稿企画を実施しました。荒野行動のアプリから直接TikTokに動画を投稿可能とし、多くの視聴者に荒野行動のプレイ動画を掲載できるようにして、多くのユーザーを巻き込むことに成功。

    結果として、日本におけるTikTokの「#荒野行動」の再生数が20億再生を突破し、大きな話題にもなりました。

    テレビ東京

    テレビ東京では、アナウンサーなどが企画としてYouTube動画を制作しています。テレビで放送されたものだけでなく、放送されていない部分なども見られる動画制作が大きな特徴です。

    また、YouTubeでしか見られないコンテンツもあり、特にアナウンサーに対して親近感を覚えるという声も聞かれます。

    商品ブランディング編

    次に商品ブランディングを目的にした企業活用事例について解説します。紹介するのは次の2社です。

    • ・無印良品
    • ・ハーゲンダッツ

    無印良品

    シンプルな商品で生活を豊かにすることを目的にしている無印良品は、ソーシャルメディアで同社の商品を使い、どれだけ生活がシンプルでお洒落になるのかを伝える画像を掲載。2017年1月にインスタグラムに投稿した、苺をフリーズドライにしてホワイトチョコレートをかけた菓子「不揃いホワイトチョコがけいちご」の写真は、「いいね」数が1万1,000件を超えるなど大きな反響となりました。

    ハーゲンダッツ

    ハーゲンダッツは、高級感をブランドとして押し出しています。そのため、ソーシャルメディアでもシンプルで高級感のある投稿を意識し、Instagram(インスタグラム)では「映える」写真を投稿。それだけではなく、新商品情報やインスタグラムだけの短い動画もアップロードし、商品をPRしています。

    また、Facebookではオフィシャル情報を中心に投稿し、Twitterでは速報性を重視した期間限定のキャンペーンなどをアピール。それぞれのソーシャルメディアをうまく使い分けています。

    ダイレクトマーケティング編

    続いて、ダイレクトマーケティングを目的にした企業活用事例について解説します。紹介するのは次の2社です。

    • ・ケンタッキーフライドチキン
    • ・コンタクトのアイシティ

    ケンタッキーフライドチキン

    ケンタッキーフライドチキンのTwitterでは、アカウント開設10周年を記念して、KFCカード2,000円分を抽選で1,000名にプレゼントするなど、顧客に対してダイレクトに価値を提供するマーケティングを実施しています。

    Twitterアカウントをフォローしリツイートが応募条件でしたが、多くの人がリツイートすれば、それだけ認知度向上にもつながりますね。

    コンタクトのアイシティ

    コンタクトのアイシティ公式LINEアカウントを「友だち」に追加すると、全国の店舗で使えるLINE限定のコンタクトレンズのクーポンを配信してもらえます。店舗への来店数を増やす狙いで実施。

    また、クーポンを配ることで、他社からの購入を防ぐことにもメリットがあるでしょう。

    CS編

    最後に、CSを目的にした企業活用事例について解説します。紹介するのはシャープ1社です。

    シャープ

    シャープは、Twitterを活用しています。公式アカウントのように堅い内容ではなく、日々積極的にフォロワーともコミュニケーションを取りながら、柔らかいツイートが特徴。この結果、バズることも多く、Googleで「シャープ twitter」で検索すると、サジェストで「面白い」と出てくることもあります。

    また、他の企業へのリプライやリツイートも行っており、広告宣伝をしないことでも有名。こうして、顧客の不満をダイレクトに吸い上げ、顧客満足度の向上を狙っています。

    まとめ

    企業のソーシャルメディア活用について解説しました。ソーシャルメディアを活用すれば、マーケティング活動やプロモーションの費用を削減できるだけでなく、双方向のコミュニケーションから商品やサービスの改善にもつながります。すでに活用している企業もあるため、参考にできる部分も多いはずです。

    そのため、これからソーシャルメディアを使おうと考えている方は、いろいろと見てみると良いでしょう。企業や業種、商品によって、合わないものもあるでしょうが、良い人材を募集する目的に始めてみても良いかもしれません。これからさらに活用される可能性も高いため、まずは自分で活用企業を見てみると良いでしょう。

    当社GROVEでは、「ブランディング」や「集客」といったお客様の目的に合わせたSNSマーケティングによるプロモーションを行っています。SNSマーケティングをこれから行いたいという方や、SNSマーケティングがうまくいかなくて困っているという方は、お気軽にお問い合わせください。