「ULSSAS(ウルサス)」とは?SNS時代の購買行動モデルからプロモーションを考える。

今や日々コミュニケーションを取る上で欠かすことのできなくなったSNS。SNSが普及したことで、情報の取り方から発信の仕方、購買行動まで変わってきています。

さらに、SNSの普及でユーザーは以前よりも広告に関して寛容になっているものの、情報の判断をする際に広告よりもインフルエンサーなどのリアルな声を重視する傾向があります。

今回は、そんな新しい時代の購買行動モデルである「ULSSAS」についてご紹介します。

ULSSASとは

「ULSSAS」とは、株式会社ホットリンクが提唱しているSNS時代における購買行動モデルです。SNSを使う中で「映えるから写真を投稿したいから、かわいいデザートを食べに行こう!」という経験のある方も多いのではないでしょうか。

SNSはチャットをしたり会話をしたり個人対個人のコミュニケーションとしてつかうだけでなく、自分が気に入ったものやサービスを個人対n数の人に向けて発信することも出来ます。ULSSASとはまさにこの行動を活かした購買行動モデルなのです。

SNS時代のユーザー行動を活かし、認知(アテンション)にUGC(ユーザー投稿コンテンツ)を活用して費用対効果の良いマーケティングを行っていくといったものです。

※UGC:User Generated Contentsの略

ULSSASの頭文字の意味は以下の通りです。

ULSSAS

  • U:UGC「これかわいい!写真を載せよう!」(ユーザー投稿コンテンツ)
  • L:Like「かわいい!いいね!」
  • S:Search1「他の写真も見てみよう」(SNS検索)
  • S:Search2「気になるから詳細情報を調べよう」(Google/Yahoo!検索)
  • A:Action「買おう!」(購買)
  • S:Spread「私も買いました!」(拡散)

ULSSASが生まれた背景

ULSSASが生まれた背景には、SNSの普及による人々の情報発信・情報の獲得方法の変化があります。SNSは2000年代以降世界的に普及し、さらにスマートフォンの普及によって私たちはいつでもどこでもSNSを利用出来るようになりました。

例えば、写真や動画共有のSNSであるInstagramの日本国内の月間アクティブユーザー数は2019年3月末時点で3300万人に達しています。(*1)SNSはもはや、単なるコミュニケーションツールの域を超えて経済活動の場としても幅を広げています。

そこで、多くの企業が顕在層に向けてGoogleやFacebookなどの限られた場で広告出稿やコンテンツ配信を行い、競っていました。しかし、リスティング広告のCPA(Cost per Acquisition:顧客1人を獲得するのにかかるコスト)が高騰している、Facebookのオーガニック投稿ではなかなかリーチがとれなくなった。そんな風に感じているマーケターの方は多いのではないでしょうか?

顕在層へのアプローチは短期的には成果を上げるものの、長期的にみるとマーケティングファネル(認知から購入に至るまでの購買行動を示す形)の入口である認知を広げないと顕在層はどんどん枯渇していきます。

このように、顕在層にだけアプローチする手法をとっていては、成果を出し続けることが難しいのも当然です。こうしたSNS普及による人々の情報発信・取り方の変化と既存のマーケティング手法の限界から、ファネルの入口を広げる手段として、ULSSASが誕生しました。

他の消費者購買モデルとの違い

購買モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理や行動の変化のことです。消費者の購買モデルを理解することで、消費者に適した商品・サービス企画や広告設定ができ、これらは売上や認知度に大きな影響を及ぼします。

そのため、マーケティング戦略を立案・実行する上で消費者の購買モデルを理解することはとても重要です。購買行動モデルの考え方が生まれたのは、1920年代のことです。そこから消費者の購買モデルは、時代やテクノロジーの進化によって変化しています。

ここでは、時代ごとの購買モデルをご紹介し、ULSSASとの違いをみてきます。

はじまり 認知のきっかけ 段階
AIDA(アイダ) 1920年代頃 CM/カタログ/店頭の広告 注意/自覚→関心→欲求→行動
AIDMA(アイドマ) 1920年代頃 CM/カタログ/店頭の広告 注意→関心→欲求→記憶→行動
AISAS(アイサス) 2005年頃 インターネットの広告 注意・認知→関心→検索→行動→共有
VISAS(ヴィサス) 2010年頃 SNS(口コミ) 口コミ→影響→共感→行動→共有
ULSSAS(ウルサス) 2020年頃 SNS(投稿・広告) ユーザー投稿コンテンツ→
いいね→SNS検索→
インターネット検索→行動→拡散

AIDA(アイダ)

AIDA(アイダ)は、1920年代のマス広告が中心だった時代の購買行動モデルで、BtoCにおける最も古典的なモデルの1つです。AIDAは「Attention/Awareness(注意/自覚)」、「Interest(関心)」、「Desire(欲求)」、「Action(行動)」の4段階で構成されています。

消費者はまず、CMやカタログ、店頭などで商品・サービスを知り、消費者が商品やサービスに関心を持ち、商品を欲し、購入に至るというパターンです。

AIDMA(アイドマ)

AIDMA(アイドマ)は、AIDAと同様、1920年代頃にアメリカの著作家、サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された購買モデルです。AIDMAは「Attention(注意)」、「Interest(関心)」、「Desire(欲求)」、「Memory(記憶)」、「Action(行動)」の5段階で構成されています。

欲求までの段階はAIDAと同様ですが、消費者が商品やサービスを欲しいと思った後に、その感情を記憶し、検証した後購買に至ります。
化粧品サンプルを試して、自分に合うことを記憶している状態で店頭の商品を買うといった行動はまさにAIDMAモデルと言えます。

AISAS(アイサス)

AISAS(アイサス)は、2005年頃に発表されたインターネットが普及した時代の新しい購買モデルです。AISASは「Attention(注意・認知)」、「Interest(関心)」、「Sarch(検索)」、「Action(行動)」、「Share(共有)」の5段階で構成されています。

AISASの特徴は、これまでの購買モデルと違い、「検索」「共有」というインターネット特有の行動パターンが加わったことです。
消費者は商品・サービスに興味をもつと、まずインターネットを使って検索します。そこで商品やサービスの詳細・口コミなどを確認し、気に入ったら購入します。購入後は、そのレビューをインターネット上で発信し、他のユーザーと共有します。

VISAS(ヴィサス)

VISAS(ヴィサス)は、2010年代以降に提唱されはじめたSNSの普及による消費者行動の変化を反映した購買モデルです。VISASは「Viral(口コミ)」、「Influence(影響)」、「Sympathy(共感)」、「Action(行動)」、「Share(共有)」の5段階で構成されています。
大きな特徴は、口コミがファネルの入り口になるところです。消費者は商品・サービスの口コミを見て、その購買理由や行動に共感し、影響を受けます。そして購買、購入後に他のユーザーに共有します。

これらの購買モデルは、認知から行動・共有までフェーズが進むにつれて下に落ちていく逆三角形のファネル形状になっています。ULSSASは、上から落とすのではなく、サイクルが回る「フライホイール(弾み車)」の形状になっているのが、今までの購買モデルとの大きな違いです。

ULSSASのメリットは、他の購買モデルと違って、サイクルが回り始めれば自律的に循環するので、多大な広告費を投下し続けなくても認知が自然発生的に広がっていくことです。

ここでポイントになってくるのは、ULSSASのはじまりとなるUGC(ユーザー投稿コンテンツ)です。先にも述べた通り、SNSが普及したことで人々は今までより多くの人の意見をいつでも、簡単に知ることが出来るようになりました。人々はSNSで投稿(口コミ)をし、投稿を見た人がそれに「いいね」やリツイートで反応、拡散をします。

例えば、旅行先の宿に関するレビューや、飲食店への口コミなどです。

マーケティングを行う上での課題のひとつである認知獲得に、広告ではなくソーシャルメディア上のUGCを最大活用するところも他の購買モデルとは違う点です。

UGCを活用することで、コンテンツを投稿、これらにユーザーが「いいね!」を付けた後、SNSで検索、GoogleやYahooでの検索と続き、購買→シェアと行動が変化していきます。その行動に合わせて、UGCもどんどんと拡散していきます。

さらに、ULSSASの入り口はユーザー投稿なので、消費者が複数の評価を比較することができ、企業の広告と比べると商品やサービスの信頼性が高いこともメリットの1つと言えるでしょう。

ULSSASモデルと言えるヒットした事例

ULSSASモデルと言えるヒットした事例

実際にULSSASモデルの事例はどういったものがあるのでしょう。ここでは、ULSSASモデルの事例を3つご紹介します。

手作りガーナチョコレートキャンペーン

お菓子メーカーのロッテがInstagram上で行ったキャンペーンです。ロッテチョコレートを使って作ったチョコレートの写真を「#手作りチョコガーナ」を付けて投稿するとキャンペーンに参加できるというものです。

企業の公式投稿のいいね数は887件に関わらず、「#手作りチョコガーナ」を付けた投稿は13,000件以上ありました。まさに、UGCがどんどん拡散していった成功した例と言えるでしょう。

キリン

飲料メーカーのキリンビバレッジがTwitter上で行ったキャンペーンです。@FSC_JapanのTwitterアカウントをフォローし、キリン商品についているFSC®マークの写真を、「#FSC®マーク」を付けて投稿すると、キリングループ商品が当たるキャンペーンに応募することが出来ます。

約1か月間の開催で約500件のリツイートと広い拡散力を見せました。Twitter上でも多くの#FSC®マークの投稿があるため、商品購買にも繋がった例と言えます。

映画「カメラを止めるな!」

2017年11月4日に公開された映画「カメラを止めるな!」は、予算300万円のインディーズ映画ながら、SNSの口コミ効果で爆発的な人気となり、2018年の邦画興行収入ランキング7位(31.2億円)となりました。

この拡散の成功は、フォロワーの多い所謂「インフルエンサー」が口コミを投稿したことが大きいでしょう。また、「とりあえず見て!」などネタばれを含まない投稿が非常に多く、そこも興味・拡散を拡大させる理由の1つです。映画の内容よりも、投稿者の熱意が共感を呼んでサイクルが回った例と言えます。

まとめ

今回はSNS時代の新しい購買モデル「ULSSAS」をご紹介しました。如何でしたか?

これまでのテレビCMや雑誌の広告などではなく、一般人の口コミが商品、サービスの購買に大きな影響を持つって、面白いですよね。商品やサービスの認知獲得に課題をもっているマーケターの方の参考になれば幸いです。

 

*1 出典:フェイスブック ジャパン長谷川代表が語る「退任の真意」–独占ロングインタビュー