トリプルメディア戦略とは?活用方法&事例とPESOとの関係

多くの企業では、マーケティング活動を通じてさまざまなメディアを利用して情報発信を行い、新規顧客の獲得や購買などの取引を推進します。マーケティングを行うメディアには、TV(テレビ)、ラジオ、新聞などから、インターネット上の企業サイト、ECサイト、ブログ、メール、各SNS、YouTubeといった動画共有サービスなどがあります。

それぞれのメディアを利用してマーケティングを行う際には、メディア毎の長所、短所を整理しておく必要があります。

一つの整理の方法として「トリプルメディア」の考え方があります。トリプルメディア戦略とは、各メディアの長所を活かし、短所を補う形で連携させるマーケティング手法です。多種多様なメディアを「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」の3つメディアに分類して、各メディアの長所・短所を明らかにします。

本記事ではトリプルメディア戦略について解説し、活用方法や活用事例を紹介します。さらにPESOメディアと呼ばれる4つのメディアに整理する考え方にも言及します。

トリプルメディアの定義

トリプル

マーケティングを行う多種多様なメディアを「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」に分類するために、それぞれのメディアの定義を解説します。

オウンドメディア

オウンドメディアとは、企業が直接的に運営しているメディアのことです。

広義では、企業サイト、ブログ、メールマガジンなどインターネット上のメディアだけでなく、広報誌、ニュースレター、パンフレットなどの紙媒体も含みます。インターネッ普及とサービスの多様化により、大企業だけでなく中小企業でもオウンドメディアを構築できるようになりました。

オウンドメディアと言えば、まず企業サイトによる商品やサービスの情報発信をイメージされる方も多いと思います。

オウンドメディアの長所に「自社で情報発信をコントロールできる」点があります。情報の内容や表示フォーマットなどの制限がなく、独自に質の高いコンテンツを発信できます。つまり、質の高い見込み客の獲得が可能です。

一方、オウンドメディアの存在を広く認知してもらうには、コンテンツを継続して発信する必要があり、効果が出るまで時間がかかる短所があります。

ペイドメディア

ペイドメディアとは、企業が費用を投じて広告配信を行うメディアのことです。

リスティング広告、SNS広告、アドネットワーク広告、メルマガ広告などのネット広告の他、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどのメディアも含みます。一般的に、テレビのCMを配信するための予算は大きくなりますが、ネット広告の中には低予算から始められるサービスが多くあります。

例えば、リスティング広告の一つであるGoogle広告の場合、Google検索で表示された広告がクリックされたときに課金されます。検索結果に表示されただけでクリックされなければ課金されないため、効率的な広告運用が可能です。

ペイドメディアの長所は、広告の形態で情報配信することにより、短期間で商品やサービスの情報を広範囲のユーザーに配信することができます。つまり、潜在顧客を発掘することが可能です。

一方、オウンドメディアのように詳細な情報の発信は難しく、ユーザーにわかりやすく簡潔な表記が求められます。また、広告効果と費用にはおおよその比例関係があるため、相応の予算が発生する点が短所と言えます。

アーンドメディア

アーンドメディアとは、消費者やユーザーが企業や商品、サービスについての情報発信を行うメディアのことです。

Facebook、Twitter、YouTube、InstagramなどのSNSはアーンドメディアの代表格であり、多くの企業がアカウントを作成しています。アーンドメディアの大きな特徴は、SNSのエンゲージメント機能(いいね!、シェア、コメントなど)により、商品やサービスについての情報が消費者を起点として拡散することです。

企業でなく消費者の反応の方が信頼度が高く見られる傾向があるため、コストをかけずに消費者の関心を集め、リピート率の向上が期待できます。

一方、消費者が情報発信の起点となるため、悪い情報も拡散するリスクがあります。いわゆる「炎上」と言われる現象もリスクの一つです。企業は情報拡散をコントロールできないため、悪い情報の拡散を直接的に止める手段はありません。企業側は消費者の反応を常に確認し、適切な対応を行う必要があります。

3つのメディアの相互関係

「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」のそれぞれの特徴を理解して、それぞれの役割を明確にして連携させることが、トリプルメディアによるマーケティングの大前提です。

オウンドメディア ペイドメディア アーンドメディア
役割 信用度アップ 認知度アップ 顧客との関係作り
具体的なメディア 自社サイト・ブログ、ECサイト… ネット広告、新聞広告… SNS、口コミサイト…
長所 ブランディング可能 短期的な集客 信用・評判の獲得
短所 顧客獲得に時間かかる 広告費が必要 悪材料の拡散リスク

具体的には、3つのメディア間でユーザーの流れを作り込みます。例えば、ペイドメディアで短期的に商品やサービスの認知を行い、関心のある潜在顧客をオウンドメディアやアーンドメディアに誘導します。

詳細は「トリプルメディアの特徴を活かした活用方法」で解説します。

トリプルメディア戦略とは?

メディア戦略

マーケティング戦略とは「市場や顧客を分析し、顧客に対して商品・サービスをアプローチする施策を実行するための戦略」のことです。トリプルメディア戦略とは、「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」それぞれの特徴を組み合わせて、マーケティング戦略を実施することを指します。

「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」それぞれ単独のマーケティング活動では、メディアの短所に起因するマーケティング活動の弱さが出てしまいます。そのため、3つのメディアそれぞれの短所を他のメディアが補完するように連携させることが大切です。

なお、インターネット上のサービスの多様化により、3つのメディアの境界がわかりにくくなってきていいます。例えば、SNSは消費者やユーザーが企業や商品、サービスについての情報発信を行うメディアですが、有料のSNS広告はペイドメディアに分類されます。また、Facebookページは、オウンドメディアとアーンドメディアの両方の特徴があります。

いかなるメディアにおいても、役割と特徴を見極めて活用することが重要です。

マーケティングにおいて重要な理由

TV(テレビ)や新聞などのマスメディア中心の広告メディアにインターネットやSNSなどが加わり、消費者の購買における行動が変化しています。インターネット検索で調査をしてから商品を購入する消費者行動モデルの一つにAISCEAS(アイシーズ、アイセアス)があります。下記の頭文字からAISCEASと呼ばれており、消費者は①~⑦の行動を行うという考え方です。

AISCEAS(アイシーズ、アイセアス)
  • ①Attention:商品を認知する
  • ②Interest:商品に対して関心を持つ
  • ③Search:商品について検索して調べる
  • ④Comparison:幾つかの類似製品を比較する
  • ⑤Examination:どれを購入するか検討する
  • ⑥Action:商品を購入する
  • ⑦Share:商品の評価を共有する

商品を販売する企業側は、消費者が①~⑦のどのステップであるかを理解して必要な情報を提供する必要があります。

  • ①:商品の認知をしてもらうためには「ペイドメディア」が有効です。
  • ②~⑥:商品について詳しく理解してもらい、購入につなげるためには「オウンドメディア」が有効です。
  • ⑦:商品の評価を他の消費者に展開して共有してもらうには「アーンドメディア」が有効です。

つまり、トリプルメディアの活用により、AISCEASのすべてのステップに対応できます。

トリプルメディアの特徴を活かした活用方法

トリプルメディアの活用

トリプルメディアの特徴を活かした活用方法としては、オウンドメディアを中心にして、オウンドメディアの短所を補完する形で、「ペイドメディア」「アーンドメディア」を利用する方法が一般的です。前章で説明したAISCEAS(アイシーズ、アイセアス)のケースでも、オウンドメディアが有効なステップが多いことからも理解頂けることでしょう。

オウンドメディアでは独自性のあるコンテンツを発信できるため、コンテンツマーケティングによるメディアの価値向上が重要です。コンテンツマーケティングとは、消費者とって価値のあるコンテンツを提供して、収益につなげるマーケティング手法です。価値のあるコンテンツの提供により、Google検索による上位表示にもつながります。

しかしながら、オウンドメディアの価値を高めるには価値あるコンテンツを継続的に提供する必要があり、効果が出るまで相応の時間が必要です。そのため、「ペイドメディア」で広いユーザーに短期的にアプローチして、関心を持ってくれたユーザーをオウンドメディアに誘導します。

また、オウンドメディアは商品の評価を情報展開、共有するメディアには向きません。オウンドメディアの価値を向上させるためには、オウンドメディアで提供する情報はすべて企業側で管理することが望ましいからです。そのため、消費者による情報の拡散は、アーンドメディアで行います。

本章をまとめると次の通りです。

ポイント
  • ・トリプルメディアの網羅性

消費者行動モデルのすべてのステップに適切なメディアで対応できる。

  • ・トリプルメディアの中心はオウンドメディア

オウンドメディアで独自性のあるコンテンツを発信して、商品に関心をもってもらい購入につなげる。合わせて企業に対する顧客の信頼を高める。

  • ・短期間での認知効果を高めるためにペイドメディアを利用

予算を投入して短期的な集客を行う。

  • ・消費者による情報発信にはアーンドメディアを利用

顧客の意見を収集でき、SNS拡散による潜在顧客の発掘も期待できる。

トリプルメディア戦略の事例

では、トリプルメディア戦略の事例としてインテルの活動を紹介しましょう。また、企業が求人を行う際にトリプルメディアが有効であることについても解説します。

インテル

インテル(Intel Corporation)は、アメリカに本社を置く半導体素子メーカーです。マイクロプロセッサやチップセットが有名ですが、フラッシュメモリの製造も行っています。

インテルでは次のステップで、121個のコンテンツでFacebookシェアやツイートなど110万以上の反応を得ることに成功しました。

インテルの戦略
  • ①SNSのンフルエンサーにインテルのオウンドメディアのコンテンツ作成を依頼(オウンドメディアの特性を活かし、ブランドイメージや製品に合ったコンテンツを発信)
  • ②ペイドメディアに投稿したコンテンツをインフルエンサーを通じて各SNSで情報拡散
  • ③SNS(アーンドメディア)やペイドメディアから、質の高いオウンドメディアのコンテンツ、及びSNSに誘導

Indeed

トリプルメディアの直接的な事例ではありませんが、企業が求人を行う手段としてトリプルメディアが注目されている状況を紹介します。

Indeedは求人情報専門の検索エンジンを提供する企業です。独自のアルゴリズムで、求人サイト、ニュースメディア、企業サイトの採用情報を巡回して、求人情報を収集しています。Indeedは検索結果の表示画面の広告掲載により収益を確保しています。現在はリクルートの完全子会社です。

インターネットが普及する前、求人情報を得る主な媒体は紙媒体でした。インターネット及びスマートフォンの普及に伴い、多数の求人メディアが立ち上がり、各メディアに求人が分散してしまいまいた。そのため、Indeedでは、企業自身が情報を発信して求職者との接点を持ち、自社のコンテンツで求職者に関心を持ってもらう求人戦略の重要性を説いています。

短期間で多くの求職者にアプローチする際にはペイドメディアを活用します。また、オウンドメディアに応募につながる価値あるコンテンツコンテンツを発信します。

求職者にとって他の求職者の口コミ情報は価値が高いため、口コミ情報発信の場として、アーンドメディアを活用します。企業はアーンドメディアから収集した情報を利用して、求人に関するコンテンツの改善も行えます。

PESOモデルの登場

近頃は、トリプルメディアに「シェアードメディア」を加えた、「PESOモデル」という考え方も登場しています。それぞれ下記の頭文字から命名されています。

P Paid Media (ペイドメディア)
E Earned Media (アーンドメディア)
S Shared Media (シェアードメディア)
O Owned Melia (オウンドメディア)

アーンドメディア、シェアードメディアの代表的なメディアはSNSです。シェアードメディアは「SNSの共有機能」に着目しており、アーンドメディアから分離されたイメージです。アーンドメディアは「メディアによる取材」、シェアードメディアは「消費者による口コミ投稿や拡散」に対応します。

各メディアの情報の流れの例は次の通りです。

各メディアの情報の流れ
  • ① オウンドメディア、ペイドメディアによる商品やサービスについての情報発信
  • ② 上記①によってもたらされるSNSでの情報拡散
  • ③ 上記②で話題性があれば、Webメディア、TV、新聞などで取り上げられ、より広範囲に情報拡散

PESOモデルで追加されたシェアードメディア(SNS)上では、多く話題が日替わりで登場します。また、消費者が情報発信の主体であるため、企業のコントロールは難しいメディアです。例えば、「企業」と「企業に属さないインフルエンサー」の良好な関係が重要と言えます。

まとめ

トリプルメディア戦略の実践では、それぞれのメディアの長所、短所を理解して連携させ、それぞれにマッチしたコンテンツを準備することが重要です。具体的には、トリプルメディアの中心はオウンドメディアであり、アーンドメディアとペイドメディアからオウンドメディアに消費者を導く動線が基本です。

とは言え、トリプルメディア戦略の実際の運用には、それぞれのメディアを活かすための予算が必要であり、また消費者行動に基づいたコンテンツ作成と発信など、企業毎のノウハウも必要になります。信頼できるマーケティング会社と相談して導入を検討しましょう。

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