企業から個人消費者に訴求するBtoC型のSNSマーケティングは、多くの企業で実施されています。一方、SNSにおける企業アカウントも増加していることから、企業から企業へ訴求するBtoB型のSNSマーケティングに注目が集まっています。海外では複数のSNSを活用したBtoB型SNSマーケティングにより、多くのフォロアーを獲得している企業があります。
SNSマーケティングは、広告が低予算から始められることから、大企業だけでなく中小企業にとっても有効なマーケティング手法です。本記事では、BtoB型のSNSマーケティングの特徴と事例を紹介します。
また、SNSマーケティングに関しての定義や進め方などの情報に関しては以下の記事で紹介しています。
SNSマーケティングとは?市場規模と始め方
目次
BtoB型SNSマーケティングの特徴
Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSは、アクティブユーザー数の多さから巨大な広告メディアに成長しており、BtoC型のSNSマーケティングが活発に行われています。近年は、BtoB型のSNSマーケティングが注目されています。
BtoCとしてのSNSマーケティングの活用
SNSマーケティングの特徴の一つは、SNSのエンゲージメント機能(いいね、シェア、クリックなど)による情報拡散です。現在もなお、LINE、Facebook、Twitter、Instagramなど、それぞれのSNSの特徴を活かしたSNSマーケティングが多くの企業で実施されています。
一般的に、SNSマーケティングと言えば、企業から消費者に訴求するBtoC型のマーケティング手法のことを指します。つまり、消費者に対する商品やサービスの認知度アップやブランディング、新規顧客の獲得、既存顧客のリピート率向上などを目的とした手法です。
BtoCとBtoBの違い
「BtoC」は「Business to Consumer」の省略形であり、企業から消費者への取引を指します。一方、「BtoB」は「Business to Business」の省略形であり、企業から企業への取引のことです。つまり、商品やサービスの購入者が「個人」なのか「企業」なのかといった違いがあります。購入者の違いをさらに深堀してみましょう。
BtoBではBtoCより具体性のあるターゲット設定になる
BtoCでアイスクリームの認知度をアップさせる場合と、BtoBでパソコン組み立てメーカーにコンデンサーを拡販する場合のターゲットをイメージしてみてください。BtoBの方がメッセージを伝えたいターゲット(=企業)が絞られて明確になります。
BtoBでは社内の決済者が購入を決定する
BtoCでは、基本的に消費者が消費者自身の意思で購入を決定します。一方、BtoBでは、企業の担当者が商品やサービスの情報を集め、合理的な判断を行い、決裁者に相談します。決済者の論理的思考と承認プロセスが加わり、最終的な購入が行われます。
BtoCの場合は「購入者=消費者」であるケースが多いですが、BtoBの場合は一般的に「購入者=決済者≠消費者」となります。
BtoBでは購入決定までの時間が長い
「購入者=消費者」のケースが多いBtoCと比較して、BtoCでは購入決定に複数の人が関わるため、購入決定までのプロセスが多く、購入決定までの時間は長くなります。
1回のみのから継続的までさまざまな購入パターンがある
BtoBでは、購入目的によりさまざな購入パターンがあります。試作品作成のための購入なら1回のみの購入になり、商品の材料・部品としての購入の場合は継続的な購入となります。
購入金額が高額になる場合がある
購入者が個人でなく企業であることから、商品やサービスによっては購入金額が大きくなります。
第三者の意見(いわゆる口コミ)が少ない傾向にある
BtoCの場合、購入を決定した消費者の口コミが多く集まります。一方、企業が購入した商品やサービスに関する情報発信は集まりにくい傾向があります。
BtoB型SNSマーケティングの狙い
BtoB型における通常のマーケティングでは、顧客である企業のニーズやレスポンスを大切にするため、販売する企業と購入する企業による直接的なコミュニケーションによるマーケティング(ダイレクトマーケティング)が多く実施されています。ダイレクトマーケティングにより、顧客となる企業と接点を持った後は、ナーチャリングの考えに基づき、良好な関係を構築し具体的な商談を目指します。
一方、通常のマーケティングと比較してSNSマーケティングの主な特徴は次の通りです。
- ・潜在顧客の開拓、認知による見込み顧客へのリーチ、およびリードを獲得しやすい。つまり、潜在ニーズをリードとして獲得し、顧客の育成につなげやすい。
- ・既存クライアントへの情報提供がしやすい。また、既存クライアントの情報提供を通じて新規のリード獲得につながる。
- ・ビジネスパーソンは、業界内の企業アカウントをフォローしている。そのため、SNSを活用した相互コミュニケーションにより、顧客企業との距離を短くし、親近感を与え、良好な関係を構築できる。
BtoB型SNSマーケティングに合った企業
SNSマーケティングでは、企業情報や商品情報などを狙ったターゲットに配信できる特徴から、マーケティングを生業としている企業に非常におすすめです。デジタルマーケティングやインフルエンサープロモーション、サイト制作など、マーケティング能力の高さを自社のSNS運用でアピールすることができます。
認知度向上やブランディングを行いたい企業
カタログやホームページでの商品説明だけでは伝えきれない情報をSNSを活用して発信して、商品やサービスの認知およびブランド力の向上が可能です。また、企業イメージ向上により、商品の魅力を高める効果も期待できます。
創業して間もない企業、認知度を広めたいと考えている企業
SNSマーケティングの手段の一つであるSNS広告を活用することにより、低予算から広告活動が可能です。つまり、これまで認知度が低い企業でも、狙った企業に自社の情報を発信して認知度を高めることが可能です。なお、SNS広告では投資した予算と広告効果の関係を分析できるため、広告活動の継続的な改善ができます。
取引先との関係性を深めたいと考えている企業
SNSにより相互のコミュニケーションが容易に行えるため、取引先や潜在顧客(企業)に対して親近感を持ってもらい、良好な関係を構築できます。
目的に応じてSNSを選定することが重要
SNS毎に仕様やユーザーに特徴があり、各企業は特徴を考慮してアカウントを開設しています。よって、情報を伝えたい企業(or業種)はどのSNSを利用しているかを考慮する必要があります。
Instagramは見栄えの良さをシンプルに伝えることができるため、ファッション、観光業を中心に広い業種で多くの企業アカウントが開設されています。文字情報は少なめであるため、実際のBtoB型SNSマーケティングの運用事例では、FacebookやTwitterと並行したケースが見られます。
YouTube
YouTubeは動画コンテンツにより、画像やテキストでは伝えきれない情報を分かりやすく発信できるSNSです。YouTubeチャンネルを開設し、動画を投稿するスタイルおよびYouTube広告が一般的な活用手法です。Facebook、Twitter、Instagramと比較すると、BtoBとしての活用はこれからという状況です。
TikTok
TikTokはBGM付きの短い動画を投稿できるSNSで、主にBtoC型のマーケティングが行われています。Facebook、Twitter、Instagramと比較してアカウント数が少ないこともあり、BtoBの活用は少ない状況です。
Twitterは幅広い年齢層のユーザーに利用されているSNSであり、広い業種で企業の公式アカウントが多く開設されています。BtoC型のSNSマーケティングが活発であり、BtoB型としての活用も増加しています。
Twitterと同様、Facebookも幅広い年齢層のユーザーが多いSNSであり、特に30代~40代のビジネスパーソンの利用が多い傾向があります。そのため、企業の公式アカウントも多く開設されています。
Twitterよりビジネス用途のイメージがあり、BtoB型マーケティングとしての活用が増加しています。Instagram広告とFacebook広告がシームレスに運用できる点もメリットです。
LINE
LINEは、日本国内の個人ユーザーでは80%を越える圧倒的シェアを誇ります。とはいえ、BtoC型が中心で、BtoBの事例は少ない状況です。
BtoB企業のSNS活用事例:国内編
BtoB企業のSNS活用事例として、国内の材料・部品メーカーの事例を紹介します。
・AGC
・デンソー
AGC
AGCは建築・自動車用ガラス、ディスプレイガラス、化学品、セラミックスを手がけるメーカーです。2018年に商号が旭硝子株式会社からAGCに変更されました。三菱グループの一員です。
デンソー
元々はトヨタ自動車の開発部門であり、現在もトヨタグループに属している自動車部品メーカーです。主な製品は自動車の熱機器関連、エンジン関連、電気機器関連、電子機器関連ですが、最近では、産業用無人航空機、バイオ分野、ヘルスケア分野、情報分野にも参入しています。
BtoB企業のSNS活用事例:海外編
前章の国内編と同様、企業向けに取引のある海外の装置メーカー、飛行機メーカーの事例を2つ紹介しましょう。
・Lam Research(アメリカ)
・ボーイング(アメリカ)
Lam Research(アメリカ)
米国Lam Researchは半導体の製造装置メーカーです。Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、LinkedInを活用したSNSマーケティングを展開しています。
施策:
半導体技術をわかりやすく解説し、Lam Research社の事業活動を広く発信しています。新技術の公開から社員の身近な写真まで幅広く知ってもらうための活動を複数のSNSを通じて実施しています。
目的:
企業ブランディング、及び新製品、IR、CSR活動の情報共有
成果:
- ・Twitter:2.2万人のフォロワー獲得
- ・Facebook:9.6万人のフォロワー獲得
- ・Instagram:3千人のフォロワー獲得
- ・YouTube:チャンネル登録者数 3千人
- ・LinkdIn:14.8万人のフォロワー獲得
ボーイング(アメリカ)
アメリカの大型型旅客機メーカーであり、ヨーロッパのエアバス社で世界市場を二分しています。旅客機以外にも、軍用機、ミサイル、宇宙機器事業も手がけています。
施策:
Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、LinkedInを活用して、ニュースリリースや宇宙開発情報、航空機に関する情報発信を行っています。また社員の紹介等も積極的に配信しています。
目的:
企業ブランディング、及び新製品、IR、CSR活動の情報共有
成果:
- ・Facebook: 149万人のフォロワー獲得
- ・Twitter: 60万人のフォロワー獲得
- ・Instagram: 140万人のフォロワー獲得
- ・YouTube: チャンネル登録者数 60.4万人
- ・LinkdIn: 213万人のフォロワー獲得
まとめ
BtoC型のSNSマーケティングに続き、BtoB型のSNSマーケティングが注目されています。BtoC型では「購入者=消費者」であり、購入決定プロセスはシンプルです。一方、BtoB型では、購入を決める企業担当者および決済者に訴求するマーケティングを意識することが大切です。
BtoB企業の事例紹介で挙げた通り、複数のSNSを活用したBtoB型SNSマーケティングにより、多くのフォロワーを獲得している海外企業があります。一方、国内企業の事例では、海外事例のフォロワー数と比較してまだ少ない状況です。国内の大企業でもフォロワー1,000人程度のアカウントがみられ、BtoB型SNSマーケティングの初期段階と言えます。
SNS広告による広告配信は低予算から可能であることから、中小企業でもBtoB型SNSマーケティングは有効なマーケティング手段です。ぜひ競合他社に先んじた取り組みをご検討ください。
当社GROVEでは、「ブランディング」や「集客」といったお客様の目的に合わせたSNSマーケティングによるプロモーションを行っています。SNSマーケティングをこれから行いたいという方や、SNSマーケティングがうまくいかなくて困っているという方は、お気軽にお問い合わせください。