動画広告の種類

現在、広告業界において、動画広告は急速に成長を広げています。検索エンジン含め、YouTubeなどの動画サイトを中心に頻繁に動画広告が流れており、今後はさらに動画広告市場は発展していくと予測されています。

今では国内において「動画広告」というワードは主にWeb上における動画広告を意味していますが、2000年代までは動画広告と言えばテレビCMをイメージする方が大半でした。

Web上では、テキストやバナーを使用した広告、テレビCMは芸能人や注目を引く演出やキャッチコピーが使用された動画広告のような線引きが存在していました。2010年代に入り、スマートフォンの普及をきっかけに、急速にWeb上の動画広告は発展を遂げて、動画コンテンツ自体の需要もさらに高まりつつあります。

今回は、急速な発展を続けている動画広告がどのような役割でどのようなメリットがあるのかについて解説していきます。

動画広告とは?

そもそも動画広告とは、その名の通り、商品・サービスの告知を目的にした動画です。商品・サービス告知に加えて企業のブランディングを目的としたものも少なくなく、目的が多様化している広告でもあります。また、動画広告の種類も複数存在しており、動画種別によってフォーマットが異なってきます。

動画広告はスマートフォンの普及をきっかけに急速に伸びたとお伝えしましたが、ここまで伸びた背景として通信環境が発展したこともあげられます。2010年代に入り、4Gが登場しスマートフォンで動画を視聴する通信環境が揃ったことから、消費者が一般的に動画広告に触れるようになりました。パソコン、スマートフォンなどのあらゆる電子デバイスやウェブブラウザ、アプリ上で視聴が可能になりました。

また、通信環境に加えてSNSが大きく普及し、YouTubeなどのSNSを中心に動画広告の出稿量が増えていきました。今では各SNSに適した動画広告が作成されるまでの成長を遂げています。直近5年間で、1人当たりの月間動画視聴時間は約5倍になったとも言われています。

また、現在各キャリアが5Gの通信環境の整備を進めており、4Gより100倍の通信速度と言われています。5Gに進化することにより、さらに動画広告市場は拡大し動画広告の内容も進化していくとされています。

動画広告はより一層消費者にパーソラナイズ化され、ただ視聴する動画ではなく、VRや3Dといった体験型に動画広告は進化していくと予測されています。では、現在はどのような動画広告があるか解説していきます。

動画広告の種類

動画広告市場の発展とともにSNSを中心にさまざまな媒体が動画広告のフォーマットを展開しており、目的や用途もそれぞれ異なっています。商品・サービスの認知・購入意向の促進を目的にした動画に加えて、企業の認知やブランディングを目的にした動画など目的においても多様化しています。

また、出稿元も今までは一定の広告出稿の予算を確保できる大手・中小企業が中心でしたが、今では少ない予算でも出稿が可能になったことにより、個人事業の方も多く参画しています。

今回は、代表的な動画広告の中でも主要である「インストリーム広告」「インバナー広告」「インリード広告」についてそれぞれの動画広告の概要と課金体制について解説していきます。

インストリーム広告

インストリーム広告とは、YouTubeなどの動画のプラットフォームで表示される動画内広告を指します。YouTubeに限らず、Google ディスプレイ ネットワークに含まれるサイトでも表示されます。

また、YouTubeなどGoogleのプラットフォームを中心に配信することから、Googleが保有しているユーザー情報からセグメントして配信が可能です。マスで配信するのではなく、あらかじめ視聴者をターゲティングすることで、費用対効果の高い配信を実現します。

インストリーム広告が動画コンテンツ内に表示されることとは対照的に、コンテンツ以外の広告枠で表示されるアウトストリーム広告も存在します。インストリーム広告には、視聴する元の動画コンテンツのタイムラインに合わせて大きく3つの種類があります。

インストリーム広告の種類
  • 1. 動画コンテンツ再生前:プリロール動画広告
  • 2. 動画コンテンツ再生中:ミッドロール動画広告3
  • 3. 動画コンテンツ再生後:ポストロール動画広告

 

プリロール動画広告で代表的なのは、動画コンテンツ視聴前に流れる6秒間の「バンパー広告」などが挙げられます。

また、広告の視聴時間も分かれており一定時間(主に6秒)経過するとスキップが可能な「スキッパブル広告」、スキップが不可な「ノンスキッパブル広告」の2種類があります。

インストリーム広告は、視聴課金制を採用しています。動画が一定以上の秒数視聴されるか、設定された広告導線がクリックされた場合のみに料金が発生する仕組みです。

一定の秒数以内で動画がスキップされた場合や導線がクリックされない場合動画費用は発生しないため、無駄な予算を削減が可能となり、テレビCMと比較して費用対効果が高いとされています。

インバナー広告

インバナー広告とはインディスプレイ広告とも呼ばれており、各プラットフォームのバナー広告枠に表示される動画広告となります。上記のインストリーム広告といった動画コンテンツの中で流れる動画広告とは異なり、Webページやアプリにおいてメインコンテンツ以外の枠にて表示される広告となります。

そのため、アウトストリーム広告の一部となります。GoogleやYahoo!などの検索エンジンを経由してWebページを訪問した際に、表示される動画広告だと考えて頂ければイメージが沸きやすいです。

インバナー広告はディスプレイ広告と同じく、さまざまなプラットフォームを通して多くのユーザーに対して配信が可能です。また、配信対象先をセグメント可能であることも大きなメリットと言えます。

インバナー広告はCPM課金となり、1,000回表示される毎にコストが発生するインプレッションの課金型となります。そのため、静止画のバナー広告配信よりCPMが高くなるとされ、細かい予算管理が必要な広告形態とされています。

インリード広告

インリード広告とは、上記の2つの動画広告の形態と比較して新しい動画広告のフォーマットです。ユーザーがWebサイトに訪れて目的のコンテンツが表示されている箇所までスクロールした際に、動画広告が画面に表示され動画の再生が始まる仕様の動画広告です。

そのため、WebサイトのTOPからコンテンツまでの間に設置されていることが一般的です。ユーザーがサイトをスクロールしていると、広告枠のバナーが急に動き出すといったようなイメージです。静止画ではなく動画広告であることと視聴者の視界に入った時点から映像が始まるため、注目を集めることが可能です。

単にスクロールして表示される広告では、インスクロール広告とは異なる仕様になっています。国内ではまだ一般的ではありませんが、海外では大きく効果を出している動画広告の一つです。

インリード広告の強みとしては、あまり広告感を出さずに自然に視聴してもらえることが挙げられます。広告は一般的に訴求感が強い売り込み式が主要でしたが、近年ではなるべく視聴者の離脱を防ぐ、不快感を与えないといったところに焦点が当てられ、売り込み感が出ない広告に需要があります。インリード広告は自然にWebページに溶け込ませられることもあり、需要が拡大する動画広告と言えます。

動画広告のメリット

動画広告を出稿する上では、メリット・デメリットが存在します。まずはメリットを「効果測定」「情報量」「話題性」の3点から解説していきましょう。

メリット
  • ・効果測定しやすい
  • ・伝えたい情報を増やすことが可能
  • ・商品ではなく動画自体で話題性の確立が可能

効果測定しやすい

基本的にGoogleなどのプラットフォームを通じて動画広告を配信するため、効果測定が数字で見ることが可能です。

従来は、特定の媒体に広告費をかけて単体毎に効果を測定するため数値化が難しいといった課題がありましたが、今ではプラットフォームが保有している情報を通じて測定が可能です。

動画広告を配信してどれくらい企業のページに流入させることができたのかに加えて、次のような情報を取得することが可能です。

配信先の視聴者の属性

視聴者の性別や年代、興味のあるカテゴリなどを中心に、情報取得が可能でデモグラフィーにすることでどの領域に効果があったのかを測定することが可能です。

視聴時間

動画広告をスキップしたタイミングを軸に、どこまで視聴者が動画広告を視聴したかなど計測可能です。

インプレッション回数

動画広告が特定のユーザーに何回インプレッションしたかの計測が可能です。例えば、5回以上インプレッションしたユーザーが購買につながらないといった効果も計測可能であるため、効果的な配信につなぐことができます。

伝えたい情報を増やすことが可能

静止画のバナー広告では、消費者に伝えたい内容は限定されています。逆に、バナー広告で情報量を増やしすぎると、結局何が伝えたいのかがわからずに、広告としての効果が薄まってしまいます。

一方、動画広告であれば、秒数で伝えたい情報量を増やすことが可能です。例えば、ある商品に5つの強みがあったとします。静止画に5つの強みの情報を入れてしまうと、情報量が多すぎて消費者に強みを伝えられない可能性が高いです。

動画の場合、それぞれの強みを映像と音声で細かく説明が可能です。加えて、なぜ5つの強みがあるのかといった情報を追加して伝えることもできるため、より複雑な商品であれば相性が良いと言えます。

例えば、ゲームの広告であれば、静止画だけだと看板画像になってしまいますが、動画であれば実際のゲームシーンやムービーシーンを入れ込むことで、消費者に購買意欲を駆り立てることも可能です。こういった商品に合わせて伝えたい情報量を自在に増やせる点は、動画広告の大きな強みであると言えます。

商品ではなく動画自体で話題性の確立が可能

大手企業を中心に、ただの動画広告を制作して配信するのではなく、動画広告自体に話題持たせるマーケティングが数年前から流行しています。テレビCMなどでもよく見られるような商品や企業についての訴求は最大限控えて、動画に出演する人物に話題の芸能人を採用する、または興味の引く演出・キャッチコピーを織り交ぜることで動画自体を話題にさせて企業の認知度を上げるといった手法です。

静止画といった少ない情報量では興味を引けなくても、動画によってストーリーや演出を加えることで動画自体に興味を持ち、動画広告をフックに企業に興味を持たせるといった流れです。こういった流れは、動画広告だからこそ可能なマーケティングと言えます。

動画広告のデメリット

動画広告には、デメリットも複数存在します。「効果測定」「制作リソース」「話題性」の3点から解説していきましょう。

デメリット
  • ・スキップされ最後まで見られない
  • ・動画制作の工数が大きい
  • ・動画の内容によってはマイナスイメージを与える可能性がある

スキップされ最後まで見られない

先ほどお伝えしたように、動画広告にはスキッパブルといって、スキップされてしまう機能が搭載されているものもあります。企業が目的に応じた動画を制作して適切な配信設定をしたとしても、最初の5秒で消費者に刺さらない場合、スキップされて視聴されないというデメリットがあります。

ただ、配信設定のセグメントや動画の冒頭に改善を加えることで、スキップの比率を下げることは可能です。

動画制作の工数が大きい

動画広告を配信する上では、動画の制作が必要となります。クオリティ・ボリュームにも依存しますが、静止画のバナーと異なり制作費用が大きくかかります。

まず、動画広告の企画から撮影・編集となると、制作にかかる工数は大きく、効果が出ず再制作となった場合、PDCAのサイクルが遅くなる傾向があります。そのため、撮影時には何パターンか撮影を行い、複数のパターンの動画広告を並行して配信することで、効果的な動画を選定しやすくなります。

動画の内容によってはマイナスイメージを与える可能性がある

動画遺体のクオリティが低かったり、キャッチコピー・演出が消費者に不快感を与えてしまったりするデメリットがあります。特に、今までのイメージとは異なる内容や商品に比例しないクオリティの動画だとマイナスイメージに直接繋がってしまうため、動画の制作は企画段階から緻密な設計が必要となります。

消費者の心理としてプラスイメージよりマイナスイメージが記憶として残りやすいため、消費者目線の配慮が必要です。

動画広告とバナー広告の効果の違い

続いては、動画広告と静止画であるバナー広告の違いについて解説していきます。Web広告全体で考えると、まだまだ動画広告よりもバナー広告が圧倒的に多いという現状です。

バナー広告とは

バナー広告は、Webサイト上に設置されている広告枠に表示される画像の広告を指します。GoogleやYahoo!などの検索エンジンからWebサイトに訪問した際に、右上や左下に表示されている画像の広告です。

バナー広告には大きく分けて2種類があります。サイト訪問者全員に表示される「純広告」と、広告を表示する対象者を消費者の興味関心に合わせてセグメントする「運用型広告」です。

バナー広告の目的は、Webサイト上でより多くの消費者の視線を集め、商品・サービスのWebサイトへの訪問を促進することです。消費者に認知してもらい、Webサイトへと流入してもらうことがメインの目的となるため、CTR(クリック数率)が指標の一つとなります。

バナー広告との違い

動画広告とバナー広告は、消費者への情報伝達量や関心度において大きな違いがあります。バナー広告は、広告の素材の制作や広告運用がしやすく、出稿先が幅広いという点で、現在でもなお動画広告より多くの割合を占めています。

ただし、広告自体の効果で考えると、動画広告はバナー広告よりも大きな優位性があります。視聴者に対して実施されたアンケートでは、1分間の情報伝達力、イメージ想起率、行動喚起率、サイトの平均滞在時間の分野において、動画広告はバナー広告と比較して倍以上の効果を発揮していることがわかっています。

このように、動画広告はバナー広告よりも伝えられる情報力が多いため、視聴者に与えるインパクトが大きいと言えます。

動画広告によるブランディング効果

動画広告を出稿することは、企業のブランディングになります。バナー広告では形成できないブランディングであっても、映像であることで消費者に対して企業のイメージを伝えることができます。

実際、企業のイメージを想起した場合、CMやYouTubeなどのイメージを持つ人は少なくありません。ここでは、動画広告によるブランディングとSNSでの話題性について解説していきます。

視覚・聴覚からイメージ付けることで想起しやすくなる

人が最も重視する情報は視覚的な情報だと言われています。ここに、音声の聴覚的情報を組み込むことで、視覚と聴覚から情報の取得が可能となります。

例えば、映像のみの視覚的情報だと目を当てないと認知できませんが、音声という聴覚的情報があることで、耳で聞くだけでイメージが沸きやすくなります。このように、音声と映像を使って消費者の感覚に訴えることで、イメージが湧きやすくなるため、ブランディングにつながるのです。

SNS拡散につながりやすい

動画はSNSなどのプラットフォームで配信するため、若年層へのリーチが増えます。そのため、広告の動画自体に関心度が高まった場合、拡散されやすい(バズりやすい)傾向にあります。

特に拡散されやすいのはYouTubeやTikTokです。実際、企業は広告の動画自体に話題が集まるような構成で制作しており、SNSにも企業の公式アカウントを作成し、動画広告を投稿しています。

テレビCMやSNSで話題を集めて興味を持った消費者が、公式アカウントのサイトまで来訪するケースも少なくありません。動画自体が話題になることで、今までの商品軸ではリーチできなかった層へアプローチするきっかけになります。

2020年代の動画広告の成功例

2020年2月からコロナ禍が深刻化し、さまざまなマーケティング市場に影響を与えました。特に対面(オフライン)の市場は大きく、マイナス影響を受けました。

そんな中、オンライン化移行が急速に広がり、それに合わせて動画広告にも変化がありました。今回、コロナ禍で成功した企業の動画広告を紹介していきます。

動画広告の成功事例
  • ・サントリー オールフリー
  • ・LINE漫画

サントリー オールフリー

サントリーは、世間でリモートワークが拡大する中、ノンアルを組み合わせて『在宅ノンアル』という動画広告を配信し、大きな話題を呼びました。ノンアルコールビールは社内では飲めませんが、在宅であれば飲むことができます。

そのポイントをサントリーはうまく活用し、『在宅ノンアル』というキャッチコピーを作成。このコロナ禍のご時世に刺さったと言えます。実際、『在宅ノンアル意識調査』では、4人に1人が飲んでもOKと答えており、コロナ禍が続く中、さらにノンアルの需要は増えていくと予想されます。

LINE漫画

LINE漫画は、主にスキッパブル広告で配信しています。スキップが可能になる6秒間に視聴者の興味を引くシーンを集めることで、スキップされる割合を大幅に下げることに成功しました。

視聴者が「続きを見たい」と思わせる内容冒頭の6秒間に入れることが重要ですが、漫画だからこそ広告感を出さずに構成を作ることが可能です。実際、LINE漫画はYouTubeやInstagramなどのSNSを中心に動画広告を配信することで、若年層を中心にサイト訪問数を上げることに成功しています。

まとめ

5Gの整備に伴い、動画広告の市場はさらに拡大していくと予想されます。現在はバナー広告が利用されることの方が多いですが、10年後は動画広告がメインとなっている可能性も十分に考えられます。

動画広告は映像と音声と構成されるため制作工数が掛かりますが、バナー広告と比較して消費者に大きなインパクトを与えることが可能です。また、テレビCMと異なり視聴者のセグメントが可能なことに加え、視聴時間によって課金されるため費用対効果も高いと言えます。

コロナ禍においても動画広告の成功例は登場しており、今後新たなマーケティング手法が生まれてくることが予測されます。

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