SNSは、「多くの消費者に、素早く情報を届けられる」というメリットから、現在では多くの企業がマーケティング手法として活用しています。しかし、SNSマーケティングが社会に定着するにつれ、「ステマ(ステルスマーケティング)」、いわゆる消費者をだますマーケティング手法が問題視されるようになりました。
そこで、この記事では、悪質なマーケティング手法「ステマ(ステルスマーケティング)」の意味と、そのリスクについて徹底的に解説します。実際の企業によるステマ事例も合わせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
「ステマ」とはどんな意味?
「ステマ」とは、ステルスマーケティングの略で、宣伝・広告であることを消費者から隠して行う宣伝活動のことを意味します。詳しくは後述しますが、ステルスマーケティングには大きく分けて2種類が存在します。
一つ目は、企業が一般消費者であることを偽って高評価を下すマーケティング手法です。従業員が口コミサイトにサクラとして高評価な口コミを書き込んだり、第三者に依頼して消費者を偽ったブログを立ち上げたりすることがこれに当たります。
そして二つ目は、著名人やSNSのインフルエンサーなどに、宣伝であることを隠して、宣伝を依頼するマーケティング手法です。「この商品を1万円で、PRであることを伏せて投稿して欲しい」などと宣伝を依頼することが一例として挙げられます。
いずれの行為も「自社商品の高評価を偽り、消費者をだます行為」に該当しています。より具体的にどのような行為がステルスマーケティングに該当するのかについては後述します。
ステマとアフィリエイトの違い
ステマとアフィリエイトは一見よく似ているので、混同してしまいがちですが、この2つは全く異なるマーケティング手法です。
アフィリエイトとは、ブロガーやインフルエンサーなどの第三者に、自社商品を宣伝してもらい、実際に「購入」「注文」などの成果が発生した場合のみ、紹介者に報酬を支払うというマーケティング手法のことです。
「商品をメディアで紹介する」「商品の口コミを投稿する」という点において、ステマと少し似ていますが、アフィリエイトはステマと違って「宣伝活動であることを隠す」ということがありません。
また、ステマは「消費者をだます行為」「情報を偽造する行為」にあたるため、さまざまなリスクを伴います。ステマとアフィリエイトの違いは次の表のとおりです。
ステルスマーケティング | アフィリエイト | |
---|---|---|
報酬 |
|
成果報酬 |
宣伝であることの明示 | なし | あり |
リスク |
|
特になし |
2023年10月からステマ規制がスタート
2023年10月1日より消費者庁はステルスマーケティングの規制法(通称:ステマ規制)を施行すると発表しました。
消費者庁は2019年にガイドラインを発表し、SNSなどで商品を紹介する際には報酬を得ていることを明示することを求めていましたが、今回景品表示法に明記され、法制定されることとなりました。
ステマ規制の基準によると、主な対象となるのは広告主で、インフルエンサーやその他の投稿者は基本的に処分の対象にはなりません。この点について、政府は「消費者が広告であると認識し、商品やサービスを選択できる環境を整えたい」との意向を示しています。
現在の法律では、消費者の自由で合理的な選択を妨げる可能性のある誤った広告表現、すなわち「優良誤認」が禁じられています。これは、商品やサービスの性能や品質を現実以上に良いと見せる行為を指すのですが、ステマ自体は、その表現が好意的な感想といった形を取るため、これまで規制対象とはなっていませんでした。
これから規制対象とされるのは、事業者からの広告なのに、広告であるとの認識が難しいケースです。具体的には、広告主から依頼や指示を受けているにも関わらず、一般の利用者を装い、ECサイトやSNSに「おすすめ」といった投稿をする行為が該当します。
また、広告主と投稿者間で明示的な依頼・指示がない場合でも、金銭や物品、イベント招待などの対価が存在する関係にある場合、それは自主的な意思ではないと見なされ、規制対象になる可能性があります。
違反があった場合、庁から措置命令が出され、広告を依頼した事業者名が公になります。命令に従わない場合には、2年以下の懲役や300万円以下の罰金が科せられることもあります。法人に対しては最大3億円の罰金が科せられる場合もあります。このような規制は、一般からの情報提供などを基に庁が実態を調査し、適用されます。
2024年6月7日に「ステマ規制」に関連した初の措置命令を消費者庁が行いました。
措置命令を受けたのは医療法人が運営する内科クリニックで、クリニックの受付窓口にてGoogleマップのクチコミに星4か星5の評価をする代わりにインフルエンザワクチンの接種代金を550円割引とプロモーションしており、これがステマに当たるとされました。それ以降も有名なパーソナルジムを手がけるRIZAP(ライザップ)が運営する「chocoZAP」(チョコザップ)でも2024年8月8日にステマ行為があったと措置命令を受けています。こちらの事例では「全サービスも24時間使い放題」を広告上謳っていましたが、実際の利用時間とは乖離が合ったことで指摘となりました。
ステマのデメリット・リスク
ここまで、ステマがどのような行為なのかをお伝えしてきました。ステマは、消費者が身近に感じる投稿を増やせるという点で効果的なマーケティング手法ではあることから、インターネット上には多くのステマが存在します。
しかし、ステマには多くの「デメリット」「リスク」が伴うため、行うべきではありません。企業がステマを行ってはいけない主な理由は次の3つです。
- 1. 社会的信用の損失を招く
- 2. 炎上の対象になりやすい
- 3. 刑事上のペナルティが発生する可能性がある
これら3つの理由について、それぞれ詳しく解説していきます。
社会的信頼の損失を招く
ステマは、「消費者をだます行為」に他ならないので、発覚すると企業の社会的信頼の喪失を招きます。
例えば、芸能人やインフルエンサーが「愛用しています!」「この商品がおすすめ!」などとSNSやブログで投稿した内容が実はやらせだった……といったステマ騒動は、よくニュースで取り上げられていますよね。そんなニュースを見れば、ほとんどの人はステマを行った芸能人、インフルエンサー本人はもちろん、その商品の販売会社に対して不信感を覚えるでしょう。
たとえステマをしたインフルエンサーや企業に悪気がなかったとしても、消費者が「この企業は消費者をだましている!」と感じることに変わりはありません。ステマが一度でも発覚すれば、またたく間に「消費者をだました企業」として世に知れ渡り、企業ブランド、そして業界全体に悪いイメージが定着してしまいます。
また、一度発覚してしまったステマは、インターネット上に半永久的に残ってしまうため、損失した社会的信用を取り戻すことは容易ではありません。長期間にわたって企業のイメージ、売り上げに悪影響を与えることが考えられます。
炎上の対象になりやすい
ステマには、発覚するとSNS上でまたたく間に拡散され、炎上するリスクが伴います。ステマが炎上に発展しやすいのには、以下の2つの理由が挙げられます。
- 1. ステマは高確率でバレる
- 2. ステマは消費者が「他人事」とは思えない行為である
第一に、ステマはかなりの確率でバレます。企業が「これならバレないだろう」と思っていても、消費者はすぐに違和感や不信感を覚えます。
特に、SNSの利用者にはネットリテラシーが高い消費者が多くいるため、少しでも怪しい部分があればすぐにバレてしまいます。ステマは「消費者をだます行為」ですので、発覚すれば自然とSNS上で拡散され、炎上へと発展します。
次に、ステマが発覚すると、消費者は「だまされた!」と不愉快に感じます。仮に自社の商品を一度も使ったことがない人でも、消費者の立場としては他人事とは思えません。ですので、消費者はSNS上で情報の拡散に加担したいと思うようになります。
刑事上のペナルティが発生する可能性がある
ステマはマーケティングにおいて、グレーゾーンだと思っている人が多いかもしれませんが、実際には「景品表示法」または「軽犯罪法」に抵触する可能性は充分にあります。
例えば、景品表示法の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」に記載されている次のような行為に該当すれば、違反となります。
- ・企業が口コミサイトやSNS、ブログに口コミを自ら、または第3者に依頼して掲載し自社商品・サービスを実際よりも優れていると消費者に認識させること
- ・実際に商品を購入していないにもかかわらず、体験談と偽って口コミサイトやSNS、ブログに掲載すること
これらの行為はステマと関連が高いため、ステマ自体は違反ではなくても、ステマに該当する行為が軽犯罪法に触れる可能性は充分にあるということになります。
実際にステマを「違法」とするアメリカなど、欧米諸国と比べると、日本はステマに関する規制がまだまだ緩い傾向があります。しかし、軽犯罪法に触れる可能性は充分にあること、そして何より、消費者をだましているということから、ステマはするべきではありません。
「ステマ」にあたる企業の2つの行為
続いて、具体的に企業のどのような行為がステマに該当するのか、そしてこれらの行為はどのようにして防ぐことができるのかを紹介します。「ステマだと知らなかった……」は言い訳として通用しません。SNSマーケティングにおいて、良かれと思ってした投稿がステマになってしまわないように心がけましょう。
- ・一般消費者を偽った情報発信
- ・著名人・インフルエンサーに宣伝を依頼する
一般消費者を偽った情報発信
最近では、多くの企業がSNSをマーケティングに取り入れていますが、発信をする際は必ず「企業公式アカウント」として投稿を行う必要があります。というのも、一般ユーザーになりきって、自社商品の使用写真をアップしたり、良い口コミを投稿したりするのは、ステマに該当してしまうためです。
多くの人は商品やサービスを購入する前に、一般消費者による口コミや評判を参考にします。これは、発信者が自分と同じ消費者の立場だから信用できるのであって、発信者が企業側の人間だったと発覚すると、消費者はとても不快に感じます。
SNSやブログ、口コミ投稿サイトなど、どんな媒体であっても、一般消費者になりすまして自社商品に関する投稿をしてはなりません。「バレないから大丈夫……」と思っていても、どこにもバレないという保証はありません。
著名人・インフルエンサーに宣伝を依頼する
企業側から著名人やインフルエンサーに自社商品・サービスの宣伝を依頼する際に発生するステマ行為です。SNS上で強い発信力を持つユーザーに宣伝を依頼すること自体は、とても効果のあるマーケティング手法ですが、やり方によっては「ステマだ!」と非難を受けてしまう可能性があるため注意が必要です。
著名人やインフルエンサーを起用して、自社商品やサービスについて投稿をしてもらう場合、その投稿が「宣伝であること」が明確でなければなりません。投稿が宣伝であることを明確にする方法には、次のようなことが挙げられます。
- ・「#PR」「#宣伝」などのハッシュタグを付ける
- ・文章(キャプション)で、広告費をもらって宣伝していることを記載する
どのようにPR表記をするかは基本的には投稿をする本人の自由ですが、人々がその投稿を「宣伝」として認識できる必要があります。例えば、画像の端っこに消費者が気づかないように「PR」と小さな文字で記載するなど、明らかに宣伝であることを隠そうとしている場合、ネガティブな印象を与えるでしょう。
このようにルール上はOKだとしても、消費者に誤解を与える可能性がある投稿は控えるべきです。ルールを守るのはもちろんのこと、「消費者がどう思うか」「消費者が誤解してしまう可能性はないか」といった点にも考慮して宣伝活動ができると良いでしょう。
「あの企業はステマをしている」という印象を持たれないように、著名人をSNSで起用する場合には、必ずPRの表記をすることを約束してもらいましょう。実際に、企業と著名人間のミスコミュニケーションによりステマが発生した事例もありますので、しっかりとコミュニケーションを取って、ステマを未然に防ぐことが大切です。
過去にあった企業の「ステマ」事例
続いて、これまでに実際に起こったステマの事例を2つ紹介します。実際に事例をチェックしてみると、「そういえば、ニュースで見かけたな」とステマ騒動が意外と身近で起こっていることを実感していただけるでしょう。
- ・大手口コミ投稿サイト
- ・大手エンターテインメント会社
事例1:大手口コミ投稿サイト
一つ目は、大手口コミ投稿サイトで発覚した、「一般消費者を偽った情報発信」に該当するステマの事例です。その内容は、「高評価な口コミを投稿すること」「掲載順位を上げること」と引き換えに、その店舗から金銭を受け取っていた業者が多く存在していたというもの。
その口コミ投稿サイトは、一般消費者の口コミ・評価をもとに「ランキング」を掲載することが人気の理由であったこともあり、「お金を払ってランキング順位を上げること」は消費者をだます行為にあたることは明らかですよね。
この事例は、「偽の口コミを投稿して、順位を上げるのをお手伝いします」という不正業者と、その誘いに乗ってしまったお店が引き起こしたステマ騒動です。口コミ投稿サイトの運営者は一切関与していません。
事例2:大手エンターテインメント会社
二つ目は、大手エンターテイメント企業によるSNS上の投稿がステマ騒動に発展してしまった事例です。上記で紹介した「著名人・インフルエンサーに宣伝を依頼する際に起こるステマ」の一例と思っていただけるとわかりやすいでしょう。
そんな大手エンターテインメント会社によるステマ騒動の発端は、公開に先立って映画を視聴してもらったクリエイター7名に、感想を表現した漫画をSNSにて投稿してもらうという企画でした。
企業がクリエイターに依頼をかけ、感想を漫画として投稿してもらうという行為は、SNSでよく見かけるマーケティング手法です。企画自体には何の問題もありませんでしたが、クリエイターが投稿の際にPRの表記を行わなかったために、ステマ騒動へと発展しました。
大手エンターテインメント主催のPR投稿だったのにもかかわらず、ステマ騒動になってしまった原因としては、依頼側と請負側のミスコミュニケーションが挙げられます。依頼から実際に投稿が行われるまでの間で、「PR表記が必要である」という情報が抜け漏れてしまったのでしょう。
企業側はこのステマ騒動に対して、公式サイトにて謝罪文を公開しています。PR表記を行わなかったのはクリエイターとはいえ、ステマは依頼側の責任問題となることがこの事例からよくわかっていただけることでしょう。
このように、「PR投稿にもかかわらず、PR表記がされていない」という事例は珍しくありません。著名人を起用した宣伝を行う際は、PR表記についてしっかりとコミュニケーションを取るように心がけましょう。
SNS運用では「ステマ」をしないように気をつけよう
SNS運用をはじめとするマーケティングでは、費用をかけてもなかなか成果が出ないこともあり、低コストで効果が出やすい「ステマ」に手を出したくなることもあるかもしれません。
しかし、ステマには「軽犯罪法違反」「社会的信用の損失」「炎上」などといった取り返しの付かないリスクが付きものですので、ステマをするのはやめましょう。
また、企業側がステマをしないように心がけていたとしても、消費者に「だまされた」「ステマだ!」と思われてしまえば、ステマをしたというイメージが付いてしまうこともあります。「ステマをしていないつもり」では、万全とはいえません。
この記事で紹介した、ステマに該当する企業の2つの行為や、これまでに実際に起こったステマ騒動の事例を参考に、今一度ステマをしないためにはどのようにマーケティングをしていけばいいのかについて考えてみるといいかもしれません。
まとめ
この記事では、ステマの定義やデメリット、実際に起こった事例とともに、企業がステマをしてはいけない理由を解説しました。
ステマは、消費者をだましているという時点で、とてもハイリスクなマーケティング手法です。実際にステマを行った企業の多くは、SNSで拡散され炎上に発展し、公式ホームページ・SNSで謝罪文を公開するという流れを取っています。消費者はもちろんのこと、自社を守るためにも、ステマは行わず、公正なプロモーション活動を行っていきましょう。
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