Instagram(インスタグラム)は10代~30代を中心に多くのユーザーを獲得しており、宣伝媒体として魅力的なSNSの一つです。また、企業やブランドのイメージを伝えやすいという特徴があり、企業アカウントも増加しています。
企業アカウントによるインスタグラムの活用において、単に定期的な投稿を続けているだけでは効果をあげることはできません。効果をあげるためには、目標設定、及び目標達成/未達成の分析および改善が欠かせません。この記事では、企業でInstagramを活用する際に必要な考え方と分析ツールをご紹介します。
目次
Instagramを分析する大事さ
これまで行ったことのない場所に車で行く場合、カーナビに目的地の設定を入力して最適経路を検索するかと思います。つまり、「目的地」と「通過地点」を決めます。「とりあえず東の方向に運転してみよう」では目的地への到達はおぼつかないでしょう。
企業でInstagram(インスタグラム)アカウントを開設して活用する場合でも、最終目的を明確化して、最終目標に到達するための中間目標を決めることから始めます。ただ単に投稿するだけでは成果をあげることができません。
組織の活動おける最終目標を「KGI」(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)、中間目標を「KPI」(Key Performance Indicators、重要業績評価指標)と呼びます。Instagramの活用においても、このKGIとKPIを決めます。
Instagramへの投稿を開始した後、投稿の効果を専用ツールで分析し、KPIの達成度合いを数値で判定します。判定結果により対策を検討し、次の投稿などのアクションに反映します。「とりあえず、なんとなく」で次のアクションを決めるのではなく、判定結果に基づく判断が大切です。
次のアクションが必ず成功するとは限らず、成功しなかった場合の理由を検討することもあります。例えば、期待通りの結果が得られなかった場合、「どのようなデータで対策を決定したのか」と立ち返って考えます。 つまり、Instagram投稿の定量的な分析を検討データとして利用します。
Instagramを分析する上でのKPI設計
続いては、Instagram(インスタグラム)マーケティングにおけるKGIとKPIについて説明しましょう。Instagramの分析とKPIの検証事例についても触れていきます。
KGIとは
KGIとは、企業における「最終的に達成すべき成果(数値)と達成時期」を示した指標です。例えば、「今年度末までに、市場シェアを10%から20%まで引き上げる」などです。ここでは、企業アカウントでInstagramを運用する場合のKGIの例を3つ具体的に紹介しましょう。
新ブランドの売上拡大の場合「1年後に新ブランドの売上高50%アップ」
Instagramへの画像や動画の投稿により、潜在顧客へのブランドイメージを伝えて認知度を向上し、売上を伸ばす目標を設定した例です。KGIでは「達成時期と目標の数値化」が大切です。「認知される」状態を「売上高アップ」に関連付けています。
自社ECサイトへの集客する場合「3年後にECサイトのユーザー登録1万人増」
Instagramではプロフィール欄にURLが記載でき、関心を持ってくれたユーザーを自社ECサイトに誘導できます。Instagramの分析では、URLのクリック数をカウントできるため、ユーザー登録数に対するInstagramの寄与を確認できます。
実店舗の来客数の場合「半年後に現状より30%アップ」
Instagramの投稿を通じてキャンペーンを展開し、実店舗の来客数アップを示したKGIです。Instagramの分析で来客数を把握するこはできませんが、来客増につながると推定した項目(フォロワー数、エンゲージメント率など)を決め、次に説明する「KPI」を設定します。
KPIとは
KPIとは、KGIを達成するための各プロセスの目標設定です。KPI設定の事例として、KGIで売上アップを設定した場合のKPI設定について考えてみましょう。
売上高は「売上単価×購入者数」で計算されます。また、Instagramの活用により、購入者数を増やす施策を行う場合、購入者数は「インプレッション数×購買率」で計算できます。つまり、「インプレッション数」と「購買率」をKPIとして設定します。
では、企業アカウントでInstagramを運用する場合のKPIの例を3つ具体的に紹介しましょう。
新ブランドの認知度向上の場合「3ヶ月でインプレッション数10万回、購買率1%」
KGIとして売上高を設定しているので、Instagramで計測(計算)可能な「インプレッション数」と「購買率」をKPIとして設定しています。先ほどお伝えした通り、KPIはKGIと論理的につながっていることが大切です。
もしインプレッション数に関するKPIを達成していない場合は、動画の投稿を増やしてユーザーの関心を惹く、投稿画像のデザインを変更して新鮮さをアピール、ハッシュタグの活用などの対策を検討します。
自社ECサイトへの集客する場合「6ヶ月後にWebサイトへのアクセス2千回/月、登録率10%」
KGIとしてユーザー登録者数増を設定ているので、Instagramで計測(計算)可能な「Webサイトへのアクセス数」と「登録率(=登録数÷アクセス数)」をKPIとして設定しています。
なお、Instagramのフォロワー数やインプレッション数が増えてもが増えてもWebサイトへのアクセス数が増えないケースもあり得ます。自社ECサイトのSEO対策やInstagram以外のSNS広告活用により、Webサイトへのアクセス数の増加を狙う手も検討します。
実店舗の来客数の場合「2ヶ月後のエンゲージメント率20%アップ」
KGI「実店舗の来客数:半年後に現状より30%アップ」の達成のためには、「Instagramのエンゲージメント率を2ヶ月後に20%向上させる必要がある」という推定に基づくKPIです。本来、「エンゲージメントが来客に変換される率」もKPIとして設定すべきです。しかし、そもそもエンゲージメントと来客に関連性があるかどうかが不明な場合は、Instagramによるテストおよび分析を行います。分析結果に基づき、KPIを再設定します。
Instagramの分析でしっかりと成果を出すためには、上で解説したようにKGI・KPIの設定が重要です。とはいえ、中には「KGIやKPIの設定がうまくできない……」と感じる方もいるでしょう。Instagram運用・分析においてお悩みの方は、ぜひお気軽に当社GROVEにお問い合わせください。
Instagramの分析ツール(無料)
Instagramに行った投稿によるユーザーの反応、例えばフォロワー数、エンゲージメント(「いいね!」のクリック、コメント記入)、URLのクリック、関連ハッシュタグの流入数など基本的な項目は無料のツールで確認することができます。
Instagram Insights
Instagram Insightsは、「個人ページ」を「ビジネスプロフィール」に変更すると利用可能となる分析ツールです。パソコンからは利用できず、Instagramアプリから利用できます。
Instagram Insightsでは、下の項目を確認することができます。Instagramの分析の基礎を理解し、他の専用ツールの良さを知るためにも一度使ってみると良いでしょう。
項目 | 概要 |
---|---|
インプレッション数 | 投稿が表示された回数 |
リーチ | 投稿を見たユニークアカウント数(同じ人が何度見ても1人としてカウント) |
エンゲージメント | 「いいね!」「コメント」「フォロー」「保存」などのアクションをしたユニークアカウント数 |
プロフィールビュー | プロフィールの閲覧数 |
フォロワー | 性別、年齢、位置情報、アクセス時間帯(要100人以上のフォロワー) |
保存 | 投稿を保存したユニークアカウント数 |
なお、ビジネスプロフィールで設定している場合に確認できる項目は次の通りです。
項目 | 概要 |
---|---|
[道順を表示]のクリック数 | 道順表示のクリック数 |
ウェブサイトクリック数 | プロフィールに記載のWebサイトURLのクリック数 |
メールアドレスのクリック数 | メール送信のクリック数 |
Insight Suite for Instagram
画像引用元:Insight Suite for Instagram
スマートシェア社が提供する無料分析ツールです。専用のWebサイトにて、利用規約に同意し、FaceBookアカウントでログインすると無料で利用可能です。スマートフォンだけでなく、パソコンでも利用できます。
Instagram Insightsでは直近7日間のインプレッション数しか確認できませんが、期間を自由に指定して確認できます。その他、フォロワー数、リーチ、エンゲージメント、フォロワー属性、場所や時間帯も任意の期間で分析できます。
Instagramの分析ツール7選(有料)
有料のInstagram(インスタグラム)分析ツールは多くの企業から提供されており、それぞれ特徴があります。ここでは、おすすめのツールを7種類紹介します(料金は2020年8月時点)。なお、分析ツールには実際に採用する際には、次の点を考慮して検討しましょう。
- ・Instagramに特化した分析ツールが良いのか?Facebook、Twitter、YouTubeにも対応した分析ツールが良いのか?
- ・競合他社のアカウントの動向を調査できるか?
- ・ビジネス規模に合ったプランと利用料金か?
- ・サポート体制の充実度はどうか?
Aista
画像引用元:Aista
Aistaは、notari社が提供するInstagram専用の分析ツールです。
通常版では、フォロワー数、「いいね!」の数、投稿数、エンゲージメント率がグラフで確認できる他、キャンペーンのハッシュタグに対応した投稿数やフォロワー、想定最大リーチ数も把握できます。また、競合他社のアカウントの動向も調査できます。プレミア版では、通常版の機能に加えて、より詳細なハッシュタグ分析、ユーザータグ分析、投稿分析が可能です。
利用料金は次の通りです。
- ・通常版:10,000円/月, クレジットカード払い
- ・プレミア版:300,000円/月, 銀行振込
SIN!S
画像引用元:SIN!S
SIN!Sは、tete marche社が提供するInstagram専用の分析ツールです。フォロワー数の推移、エンゲージメントをパソコンで確認でき、CSVファイルでダウンロードできます。また、他社のアカウントの動向を調査が可能です。ハッシュタグの日別投稿件数推移も確認できたり、エクセル形式のレポートを自動作成する機能もあったりします。
料金プランは次の通りです。
- ・LITE:期限付き無料版
- ・STARTER:10,000円/月
- ・PROFESSINAL:50,000円/月
- ・ENTERPRISE:料金お問い合わせ
MASAI
画像引用元:MASAI
MASAIは、パスチャー社が提供するInstagram、Twitter向け分析ツールです。フォロワー数、エンゲージメント率などの推移をブラウザで確認できます。また、分析データのCSV形式、パワーポイント形式でのダウンロードが可能で、運用レポートを短時間で作成可能です。
さらには、投稿画像を解析し、独自の解析方法から最適なトンマナ(トーン&マナー)分析、競合他社アカウントの分析にも対応しています。メール・電話による常時サポート、月1回程度の勉強会などのバックサポートが充実しています。
AISIGHT
画像引用元:AISIGHT
AISIGHTは、AIQ corporationが提供するInstagram専用の分析ツールです。AI技術の導入により、人気投稿に載るタグの提案機能が特色の一つです。フォロワーの属性を把握、ストーリーズの分析、A/Bテストにも対応しています。人気が出るタグの予測、フォロワーが利用しているタグの可視化などを確認できるため、ハッシュタグごとに最適なた投稿を行うことができます。
HOTARU
画像引用元:HOTARU
HOTARUは、AI Marketing社が提供するInstagram専用の分析ツールです。アカウントだけで分析可能で、パスワードを入力する不要がありません。毎日のフォロワー数、いいね数、コメント数、エンゲージメント率などのグラフ化機能により、日々の投稿のモチベーション向上につながります。
また、Instagramの運用テクニックが書かれた課題カードを100枚以上用意されており、課題カードに対応していくことにより、アカウントのクオリティを向上できます。プロプラン・ビジネスプランでは、分析データCSV書き出し機能や、アカウント比較機能等が利用できます。
料金プランは次の通りです。
- ・スタンダードプラン:無料
- ・プロプラン:10,000 円/月(2ヶ月目以降)
- ・ビジネスプラン:導入費5,000 円、2ヶ月目以降30,000 円/月
SPRAY Insight
画像引用元:SPRAY Insight
SPRAY Insightは、クロスリング社が提供するInstagram専用の分析ツールです。自社および競合他社のアカウントの運用成果を分析して可視化できます。
さらに、AI技術の活用により、想定リーチ、画像解析によるカテゴリー抽出、 ハッシュタグやインフルエンサーの提案が可能です。またワンクリックでPDFやエクセルへのレポート出力ができます。
料金プランは次の通りです。
- ・スタンダード:19,800円/月
- ・プレミアム;39,800円/月
- ・エンタープライズ:98,000円/月
Social Insight
画像引用元:Social Insight
ユーザーローカル社が提供する、Facebook、Twitter、YouTube、Instagram、Google+などの分析ツールです。Instagram分析では、フォロワーの投稿ハッシュタグなどから「いいね!」されやすい画像を調査できます。
また、自社や競合他社の「フォロワー数」や「いいね!」推移を見える化が可能です。ハッシュタグ分析機能(自社ブランド名のハッシュタグを含む画像のモニタリングなど)も充実しています。さらには、フォロワーがInstagramを使っている時間にあわせた投稿が可能になり、より多くの反応を得ることができます。
Instagram分析PDCAの仕方
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことによる継続的な改善活動です。Instagramの企業アカウントにおいても、PDCAサイクルを回してKPIをクリアしつつ、KGIを達成する運用が大切です。
Plan(計画)
企業活動の実施には、まず「ターゲットを明確化した企画」が必要です。例えば、「これから新社会人としてデビューする世代に向けて、一人暮らしに便利な生活空間を提供する。第一弾として新ブランドを立ち上げ、一人暮らしにフィットする家電製品を提供する」などです。企画の目標としてKGI(例:1年後に新ブランドの売上高50%アップ)を設定し、KGIをプロセス毎に分割して達成、未達成を検証可能なKPI(例: 3ヵ月でインプレッション数10万回、購買率1%)を設定します。
一般的に、KGIを達成するためには複数のKPIを設定します。KPIを設定する際には、Instagram分析で得られる測定可能な項目(フォロワー数、エンゲージメント率、URLのクリック率、ハッシュタグの投稿数など)を用います。
まとめると、PDCAサイクルにおけるPlanフェーズでは、企画からKGI、KGIからKPIをブレイクダウンして明確化します。継続的な改善活動であるPCDAサイクルではKGIを念頭におきつつ、KPIを達成するための活動を行います。
Do(実行)
KPIを達成するための投稿を行います。例えば、インプレッション数を増やすKPIの対策として、画像や動画などのコンテンツデザイン、ストーリーズの活用、ハッシュタグの工夫などInstagramの機能を活用した投稿を行います。 なお、購買率を正確に計算するため、Instagramの投稿と販売実績を紐づける施策、例えばInstagramによるクーポン発行も実施しておきます。
Check(評価)
Instagramの投稿の効果(フォロワー数、プロフィールのアクセス数など)を分析して、Planフェーズで設定したKPIの検証を行います。Planフェーズで設定したKPIの事例「3ヶ月でインプレッション数10万回」については、Doフェーズで行った投稿のインプレッション数を確認して検証します。購買率については、Doのフェーズで実施したクーポンの利用実績で計算することができます。
Action(改善)
Check(評価)の結果に基づき、KPIを達成していない項目について対策案を検討します。例えば、インプレッション数を増やすなら、投稿のデザイン、タイミング、動画の活用、ハッシュタグの変更など、ユーザーの行動を推定して対策を立案し、次回以降の投稿(アクション)に反映します。また、売上増というKGI達成の観点を考慮すると、次回から少し高価格帯の商品を宣伝するという対策もあり得ます。
このようなPDCAサイクルを継続的に繰り返すことにより、KPIをクリアしつつKGI達成を目指します。また、定量的なデータによる分析と推定および検証を繰り返すことにより、今後のInstagram活用において独自のノウハウが蓄積できます。
まとめ
InstagramにおけるKGI、KPIの設定、分析ツールの紹介、PDCAサイクルによる改善活動について説明しました。Instagramによる企業アカウント活用においては、定量的なデータによる分析と推定、および検証を繰り返すことが大切です。また、企業側の視点で目新しいことに取り組みがちですが、常にユーザー視点で考えることを忘れてはいけません。
さらに、分析ツールを活用した効率的なInstagramの運用も検討しましょう。Instagramが提供する「Instagram Insights」は最低限の分析しかできず、スマホでしか分析結果を確認できません。近頃の有料ツールは、膨大なデータに基づくAI技術により、より効果的な投稿が可能になっています。自動レポート作成機能も見逃せません。可能であれば、有料ツールを利用することをおすすめします。
また、PDCAサイクルをどのように回せば良いのかわからない場合もあるでしょう。そういった場合は、信頼できるマーケティング会社に相談することも一つの近道です。当社GROVEでは、Instagramよる「ブランディング」や「集客」などのプロモーションを行っています。お困りの方や、これから始めたいとお考えの方は、当社GROVEに問い合わせください。