小売業を中心に広がりを見せている「オムニチャネルマーケティング」。単語は聞いたことがあるものの、具体的な内容はあまりイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。オムニチャネルマーケティングは購買行動の多様化が進む現在、多くの企業が検討すべきマーケティング戦略の一つです。そこで本記事ではオムニチャネルマーケティングの意味や進め方、事例などを解説していきます。
目次
オムニチャネルマーケティングとは?
オムニチャネルマーケティングとは、顧客が利用している複数のチャネルを組み合わせて、顧客体験を生み出すマーケティング戦略の一つです。とくにアパレルを含む小売業に多く広まっています。例として、「アプリで取り置きをして、実店舗に商品を取りに行ける」「実店舗で買った商品をオンライン上で返品対応ができる」などの施策が挙げられます。オムニチャネルマーケティングを実施することで、ユーザーは複数のチャネルを行き来しながら、シームレスかつ一貫した顧客体験を享受することができます。
オムニチャネルマーケティングが注目される背景
企業のマーケティング戦略上、オムニチャネルマーケティングが注目される背景にSNS、ECサイトなどの普及による「購買行動の多様化」が挙げられます。
ユーザーは今や実店舗に行かなくとも、複数のECサイトの中から最も安価で買えるサイトで商品を購入することができます。さらに商品を購入する前には、SNSで口コミを確認する方も少なくありません。中には実店舗に行って、実際に商品を確認してからECサイトで購入する方もいるでしょう。
このように複数のチャネルを自由に行き来するユーザーへアプローチするためには、複数のチャネルを用意し、連携させる必要があります。こうした背景により、オムニチャネルマーケティングは注目を集めているのです。
オムニチャネルマーケティングを進める4ステップ
オムニチャネルマーケティングを進める4つのステップを確認していきましょう。
オムニチャネルマーケティング実施までの計画・ロードマップを立てる
最初にオムニチャネルマーケティングを実施するまでの計画・ロードマップを作成しましょう。具体的には以下の情報を整理します。
- ターゲット層
- オムニチャネルマーケティングの目的
- 実施のタイミング
- 実施までに必要なこと(人材・ツール)
オムニチャネルマーケティングは複数の部署が連携して行う施策です。マーケティング部門が中心となりつつも、上記の項目について関連部署との情報共有も必要になるでしょう。
カスタマージャーニーをつくる
続いて、カスタマージャーニーを作成しましょう。カスタマージャーニーとは、ユーザーが商品・サービスを認知し、購入するまでのプロセスのこと。直訳すると「顧客の旅」です。
カスタマージャーニーをつくることで、ユーザーが商品を認知するタイミング・チャネルや各チャネルにおけるユーザーとの接点、商品を購入するきっかけなどの仮説を立てることができます。この仮説を基に、どの領域にオムニチャネルマーケティングを導入できそうなのか、どのような体験を提供していきたいのかを整理しましょう。
ソフト面・ハード面で連携を行う
オムニチャネルマーケティングを実施するために、ソフト面・ハード面の両面で連携を行います。
- ソフト面:社内組織を見直し、柔軟にオムニチャネルマーケティングを実施できる体制を整える
- ハード面:実店舗・SNS・ECサイトなどをまたいだ顧客情報の連携やポイント・クーポンシステムの統合などを行う
上記の連携を行うことで、ユーザーにチャネルをまたいだシームレスな体験を提供する素地が整います。
効果検証・改善
オムニチャネルマーケティングを実施したあとは、効果検証・改善も重要です。カスタマージャーニーと異なるユーザーの行動やチャネルとの接点などが発生すれば、適宜改善を進める必要があるでしょう。
また社内体制の改善が必要なケースもあるかもしれません。例えば、「アプリで注文した商品を実店舗で受け取れる仕組みを整えたにも関わらず、対応するスタッフがいないために機能しなかった」という例もあるようです。
なお、蓄積したユーザーの行動データも効果検証・改善に役に立つことでしょう。
オムニチャネルマーケティングで必要な価値統一とその手法
オムニチャネルマーケティング実施においては、すべてのチャネルで一貫性のある価値観を提供することが大切です。バラバラな価値観をブランディング、セールス、プロモーション(コミュニケーション)などで提供しても、ユーザーへの訴求効果は弱く、ユーザーとしても戸惑ってしまうためです。
統一された価値観の訴求にはブランドとして一貫したコミュニケーションが必要です。ブランド構築にはいろいろな手法ありますが、チャネルの一貫性を可視化するには一つ、キャラクターや顔となる人物の起用などが考えられます。また、SNSとも連携となるとインフルエンサー活用は有効で、かつインフルエンサーのソーシャル力を使えば、効率的に価値観の訴求もできることでしょう。
オムニチャネルマーケティングの事例
最後にオムニチャネルマーケティングの事例を3つ見ていきましょう。
株式会社ユニクロ
株式会社ユニクロでは、ECサイトと実店舗をリンクさせたお買い物体験を提供するために、お買い物アシスタント「IQ」を展開しています。IQは商品選びのお手伝いからサイズ提案、配送状況の確認や注文した商品のキャンセルなどを利用できるチャットボットです。IQ内で商品の購入はできませんが、IQが提案した商品をタップすることで、オンラインストアの商品詳細ページを確認し、オンラインストアで購入手続きを進めることができます。もちろん、商品を実店舗で購入することも可能です。ECサイト・チャットボット・実店舗を連携させたオムニチャネルマーケティングの良い例と言えるでしょう。
株式会社良品計画(無印良品)
株式会社良品計画(無印良品)では、アプリ「MUJI passport」を用いて、実店舗とネットとを連携させた顧客体験を提供しています。
<MUJI passportの機能例>
|
上記のなかでも大きな特徴が、無印良品の実店舗やネットストアでの買い物、お店へのチェックインなどで「MUJIマイル」が付与される点です。貯まったマイル数によりステージがアップし、1ポイント=1円相当で支払に使える「MUJIショッピングポイント」がプレゼントされます。ユーザーに「無印良品に行きたくなる」体験を提供しているオムニチャネルマーケティングです。
イオン株式会社
イオン株式会社では、スマホアプリを活用し、オムニチャネルマーケティングを進めています。イオングループ公式アプリ「iAEON(アイイオン)」では、スマホで支払える「イオンペイ」やポイント管理機能、店舗検索機能などが搭載されています。店舗検索から支払い、ポイント管理までをアプリ上でシームレスに完結することが可能です。とくにイオンを頻繁に利用するユーザーにとっては、メリットの大きい施策でしょう。
まとめ
今後、新たなアプリ・サービスの登場により、購買行動の多様化はさらに進む可能性があります。とすれば、オムニチャネルマーケティングの重要性も増してくることが考えられます。
また本記事でも解説したとおり、オムニチャネルマーケティングにおいてはインフルエンサーの活用による一貫した価値観の訴求がポイントです。
当社GROVEでは、お客様のニーズに応じてインフルエンサーマーケティングを支援しています。オムニチャネルマーケティングを効率的に実施したい方や効果を上げたいと考えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。