1990年に提唱されて以降、ゲームやカメラアプリなどを中心に発展してきた「AR(Augmented Reality:拡張現実)」。2016年の「Pokemon GO」の世界的大ヒットを機に、ARという言葉が世間一般に広く浸透しました。
今や、私たちの生活の一部として定着しつつあるAR。2017年にはFacebook・Instagram上で公開できる「Spark AR」も登場し、若い世代を中心に、多くの人がSpark ARを楽しんでいます。
この記事では、そんなSpark ARに着目。Spark ARの基本情報はもちろん、Spark ARをプロモーション利用するメリットや企業における成功事例、成功するためのポイントから作成・公開手順まで、幅広く解説しています。Spark ARに興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
Spark ARとは
「Spark AR」とは、Facebook社が提供しているARエフェクトの名称です。無料公開されている「Spark AR Studio」を使えば誰でも簡単に作成することができ、作成したSpark ARはFacebookやInstagram上で公開できます。
2017年にリリースされたSpark AR。Facebook社によると、2019年には世界中で10億人以上がSpark ARを体験するなど、大きな盛り上がりを見せています。
こうした背景を受け、Spark ARを活用したプロモーションに取り組む企業が年々増加。Spark ARならではの「遊び心」や「拡散性」に注目し、新たなプロモーション手段として積極的に活用する企業が目立っています。
本記事でも「Spark ARを利用したプロモーション成功事例4選」内で、成功ポイントと共に解説していますので、ぜひご覧ください。
Spark ARの例
Spark ARにはさまざまな種類がありますが、主に以下の4タイプに分類できます。早速見ていきましょう。
- ・画面にエフェクト効果を与える写真・動画向けSpark AR
- ・音声にエフェクト効果を与える動画向けSpark AR
- ・空間にキャラクターを登場させるSpark AR
- ・ゲーム性のあるSpark AR
セルフィーを撮ると、画面いっぱいにミニガーベラが咲き乱れるこちらのSpark AR。先程の分類では「画面にエフェクト効果を与える写真・動画向けSpark AR」にあたり、Spark ARの中でも最も投稿が多いタイプです。
顔周りにもミニガーベラが貼り付き、簡単にかわいらしい雰囲気のセルフィーを撮ることができるので、若い女性を中心とした人気・拡散性が見込めます。
レトロのフィルム調がおしゃれな、こちらのSpark AR。上・中央・下それぞれの画面で絶妙に撮影タイミングが異なるため、何気なく撮った動画も”映える”動画に仕立て上げてくれます。
先程同様、「画面にエフェクト効果を与える写真・動画向けSpark AR」ですが、動画撮影を前提としている点が特徴です。
「音声にエフェクト効果を与える動画向けSpark AR」に分類されるこちら。キャプチャだと伝わりませんが、音声がボイスチェンジャーを通したようなガラガラ声になり、音の大きさに応じて画面中央の白いバーがさまざまな形に変化します。
年代を問わず、幅広いユーザーが「使ってみたい」と思えるSpark ARです。
こちらのSpark ARは「空間にキャラクターを登場させるSpark AR」タイプのもの。画面に人を認識するとうさぎのキャラクターが肩の上に現れ、音楽が流れるという仕組みです。
子供を喜ばせる魅力が詰まったSpark ARなので、主にママ達の間で大ヒットしました。
最後に紹介するこちらのSpark ARは、「ゲーム性のあるSpark AR」です。動画撮影を開始すると、頭上のルーレットが自動的にスタート・ストップするというシンプルな仕組みになっています。
「あなたは今年の終わりに:結婚している/金持ちになっている/人気者になっている……」などの項目が設定されており、運試しとして思わず試してみたくなるSpark ARです。
Spark ARをInstagram(インスタグラム)上で利用する方法
Spark ARをInstagram上で利用する方法は3つです。
- ・エフェクトギャラリーからSpark ARを探す
- ・Spark ARの作成者アカウントから探す
- ・Spark ARの作成者アカウントをフォローする
エフェクトギャラリーから好みのSpark ARを探すことが一般的ですが、魅力的なSpark ARを多数公開してれば、アカウントをフォローしてもらえる可能性があります。
Spark AR作成者のアカウントをフォローすると、次のようになり、お気に入り作成者のSpark ARを見つけやすくなるためです。
- ・作成者アカウントから公開中のSpark AR一覧に遷移できる
- ・フォローした作成者のSpark ARが優先的に表示される
アカウントフォローのきっかけにもなるSpark AR。一時的な拡散だけでなく、中長期的なフォロー関係を通じたファン化にも期待ができます。
プロモーションの新たな手段として定着しつつあるSpark AR
ここまで、Spark ARの一般的な内容について紹介してきました。Spark ARがどのようなものか、具体的なイメージも掴んでいただけたことと思います。
ここからは、プロモーションにおけるSpark ARについて解説していきましょう。
AR広告市場は年々拡大傾向にある
アメリカの調査会社INSIDER INTELLIGENCEによると、2018年のAR広告市場は世界全体で4.28億ドルに到達。前年比250%という、大きな成長率を見せています。
2022年には市場規模が26億ドルを突破するとも予測されており、AR広告市場は世界中でますます盛り上がりを見せることが見込まれます。
さまざまな分野で活躍するAR
ARを用いたプロモーションの成功事例は、枚挙にいとまがありません。AR広告としてはもちろん、ECサイトのコンテンツとして設置するなど、さまざまな分野・形での活用が進められています。
こちらは、スイスの高級腕時計「TISSOT(ティソ)」のAR試着ができるアプリのデモ動画です。TISSOTの店舗で配布される紙のリストバンドを腕にはめ、端末に手をかざすと、TISSOTの腕時計をはめたようなARが表示されます。
本物の腕時計をはめているかのような試着感と、瞬時に腕時計の種類を変更できる利便性が話題になったこちらのARプロモーション。TISSOTは、このプロモーションによって3週間で85%も売上が増加したと発表しています。
他にも、FacebookのAR広告によって化粧品ブランドがCVRを27.6ポイント改善した事例や、家具系ECサイトがCVRを11倍に伸ばした事例など、さまざまな分野で活用が進んでいるAR。
こうした成功事例を受けて、AR広告を導入する企業がどんどん増えているのです。
Spark ARを利用したプロモーション成功事例
続いて、Spark ARを利用したプロモーション事例を紹介していきましょう。事例ごとに工夫しているポイントについても解説しますので、自社でSpark ARを取り入れる際の参考としてお役立てください。
KOSE|化粧品メーカー
コーセー / KOSÉ(@kose_official)
大手化粧品メーカー・KOSEでは、人気の化粧品ブランド・ヴィセの「プリズムヴィーナスアイズ」をお試しできるSpark ARを作成。カメラをかざすだけで瞼にメイクが施され、商品の発色や艶感を試すことができます。
画面をタップすることでカラーを切り替えることもでき、わざわざ店頭に赴かずとも、自分に似合うカラーを見つけることができます。Spark ARを通じて簡単に商品を試すことができ、自分に合った色を見つけることで、商品の購入を促す成功事例です。
JILL STUART Beauty|化粧品ブランド
ジルスチュアートビューティー(@jillstuartbeauty)
JILL STUARTのコスメライン・JILL STUART Beautyでも、自社商品のタッチアップができるSpark ARを公開。商品はルーレット形式で次々切り替わり、商品の使用感とゲーム性の両方を同時に楽しむことができます。
ただ商品の魅力をアピールするだけでなく、ユーザーを楽しませる工夫も盛り込んだSpark ARの好事例です。
キッコーマン|食品メーカー
キッコーマン豆乳 公式(@kikkoman_tounyu)
キッコーマンでは、人気の「キッコーマン豆乳」シリーズのパッケージを映すと桜が舞い散るSpark ARを公開しています。このSpark ARを用いて投稿すると、公式アカウントでシェアされるというキャンペーンも並行して開催しており、ユーザーの参加意欲を盛り上げる工夫がなされています。
この事例のように、商品を映すことで反応するSpark ARには、ユーザーの購入意欲を刺激する効果が期待できます。
PLAZA|輸入雑貨専門店
プラザ/PLAZA(@plazastyle)
続いてご紹介するのは、若い女性を中心に人気を集める輸入雑貨専門店・PLAZAのSpark ARです。これまでご紹介してきたSpark ARと異なり、プロモーション色が薄いこちらのSpark AR。
PLAZAのメインターゲットであるF0層に人気のキャラクター・ケアベアを用いたSpark ARで、ポップでかわいい写真や動画が簡単に撮影できるようになっています。
PLAZA自体や商品を直接アピールするものではありませんが、日常的に使いやすく、思わずシェアしたくなるかわいさが魅力のSpark AR。ユーザーの購入意欲促進を目的とせず、ユーザーを楽しませること・拡散性を持たせることに主眼を置いたSpark ARです。
Spark ARをプロモーション活用するメリット
年々盛り上がりを見せるSpark AR。なぜ、多くの企業がSpark ARをこぞってプロモーションに取り入れるのでしょうか?その理由は、以下の6つのメリットにありました。それぞれ具体的に見ていきましょう。
- ・通常のプロモーションに比べて拡散性が高い
- ・興味関心・購買意欲の向上を促進できる
- ・購買プロセスの各フェーズに適したプロモーション展開が可能
- ・アカウントフォローを通じて継続的な関係を構築できる
- ・アカウントへの親密度を上げやすい
- ・広告費がかからない
通常のプロモーションに比べて拡散性が高い
Spark AR最大のメリットは、極めて高い拡散力にあります。
ユーザーがSpark ARを用いた写真・動画をInstagramに投稿すると、投稿にはSpark ARを利用するためのリンクが設置されます。これによって同じSpark ARを気軽に利用することができますので、投稿が新たな投稿を呼び、効率的にSpark ARを拡散させることができます。
また、投稿にはSpark AR作成者アカウントへのリンクも設置されますので、Spark ARを通じてアカウントに興味を持ってくれたユーザーのフォローにも期待ができます。
興味関心・購買意欲の向上を促進できる
Spark ARの使い方によっては、商品・サービスへの興味関心や購買意欲の向上につなげることができます。先程紹介した事例の中にもありましたが、Spark ARの中で興味関心や購買意欲向上の促進に役立つものには次のものがあります。
- ・商品・サービスを試すことができるSpark AR
- ・自分に合った商品・サービスが提示されるSpark AR
- ・商品や店舗内設備を写すことによってエフェクトが発動するSpark AR
遊び感覚で商品やサービスを試すことができるSpark AR。いろいろ試していくうちに興味関心がかきたてられ、効率的に購買意欲を育てることができるのです。
購買プロセスの各フェーズに適したプロモーション展開が可能
見せ方や使い方によって、購買プロセスのフェーズごとに最適なプロモーション展開ができるSpark AR。以下に、フェーズごとにおすすめのSpark ARをまとめました。
思わず使ってみたくなるようなSpark ARがおすすめ。
おしゃれな写真・動画が撮影できるSpark ARや、遊び心あるゲーム性を取り入れたSpark ARなど。
店舗に立ち寄ったり、商品・サービスについて詳しく調べたくなったりするようなSpark ARがおすすめ。
店舗の看板や設置したQRコードにかざすと発動するSpark ARや、商品などがAR空間に出現するSpark ARなど。
商品・サービスの購入を後押しするようなSpark ARがおすすめ。
商品をリアルにお試しできるSpark ARや、購入した商品パッケージをかざすと発動するSpark ARなど。
アカウントフォローを通じて継続的な関係を構築できる
「このアカウントのSpark ARを積極的に使いたい」という欲求を刺激できれば、アカウントフォローのきっかけにもなってくれるSpark AR。アカウントをフォローしてもらえれば、投稿を通じて継続的な関係を構築することができ、ファンとしての育成はもちろん、キャンペーンや新着情報を投稿することで購買意欲を向上させることも可能になります。
アカウントへの親密度を上げやすい
基本的に、ユーザーの多くは企業によるプロモーションを嫌うもの。企業側の「売りたい」「もっと知って欲しい」という欲が透けて感じられるからでしょう。
一方、Spark ARを活用したプロモーションは「ユーザーを楽しませたい」という思いが前提にあるため、一般的なプロモーションのような嫌悪感を抱かせません。楽しい・おもしろいSpark ARを展開できれば、企業やアカウントに対する親密度向上にも繋がるでしょう。
広告費がかからない
Spark ARは、誰もが無料で公開できるARエフェクトです。広告商品ではないため、公開に際して広告費は一切発生しません。
また、Spark AR作成ツール「Spark AR Studio」も無料で公開されていますので、環境さえ整っていれば、無料で作成・公開できてしまいます。
優れた有効性を備えた一方で、誰でも気軽に始めることができるSpark AR。次の項目では、次の2点について解説していきますので、Spark ARに挑戦してみたい方はぜひ最後までご覧ください。
- ・Spark ARプロモーションで成功するためのポイント
- ・Spark ARの作り方
Spark ARプロモーションで成功するためのポイント
Spark ARプロモーションを成功に導くポイントは、次の3つです。各ポイントについて具体的に見ていきましょう。
- ・使いたくなる・拡散したくなる仕掛けを意識する
- ・ユーザーを楽しませることを第一目的と考える
- ・Spark ARの特徴がひと目で分かるアイコン・サムネイルを設定する
使いたくなる・拡散したくなる仕掛けを意識する
Spark AR最大の魅力である「拡散性」を最大限発揮するためには、使いたくなる・拡散したくなる仕掛けが重要です。おしゃれである・楽しい・目新しい・ゲーム性がある・刺激的である・友人同士で楽しめる・新しい自分に出会える……など、仕掛けの方法はさまざま。
自社に適した仕掛けを生み出すためには、一度、ターゲットの気持ちになって公開中Spark ARを見てみることをおすすめします。「ダーゲットならどんなSpark ARを使いたくなるか?」という視点でSpark ARを探すことにより、自社に適した仕掛けのヒントを発見できることでしょう。
ユーザーを楽しませることを第一目的と考える
先に紹介したポイントの続きになりますが、使いたいと思ってもらえるSpark ARにするためには、ユーザーを楽しませる工夫を盛り込むことが大前提です。
継続的な利用や拡散につなげるためには、「楽しかった」「おもしろかった」と思ってもらうことが一番です。プロモーションとしての役割を意識しすぎるあまり、ユーザーを楽しませる工夫を欠いてしまわないよう注意しましょう。
Spark ARの特徴がひと目で分かるアイコン・サムネイルを設定する
公開したSpark ARは、
- ・ストーリー作成画面:アイコンで表示
- ・Spark AR一覧画面:サムネイルで表示
でそれぞれ表示されます。
無数にあるSpark ARの中から選んでもらうためには、アイコン・サムネイルを見ただけでSpark ARの魅力が伝わるようにしなければなりません。Spark ARの中身だけでなく、アイコン・サムネイルにも工夫を凝らしましょう。
意外と簡単!Spark ARの作り方
それでは、いよいよSpark ARの作り方に入っていきます。Spark AR作成に必要なものは次の4点です。
- 1. Spark AR Studio
- 2. Facebookアカウント
- 3. Instagramアカウント
- 4. Spark AR素材作成用ツール(PhotoshopやIllustratorなど)
※利用できる素材をすでに所持していれば、4は必要ありません。
Spark AR Studioは無料でダウンロードできます。
続いて、Spark ARの作成・公開手順をご紹介します。作成・公開に必要な手順は、大きく分けて3ステップです。
1. Spark ARで使用する素材を作成する
まずは、Spark ARで使用する素材を作成しましょう。PhotoshopやIllustratorを使うケースが多いと思いますが、透過PNGが作成できるツールであれば基本的に対応可能です。
背景が透過されてさえいれば、すでに所持している素材やロイヤリティフリー素材などを利用することも可能です。
2. Spark AR Studioを用いて素材の出現場所を設定する
作成した素材をSpark AR Studioにアップロードし、画面上のどこに素材を表示させるかを設定します。このステップがもっとも時間を要しますが、具体的な作成手順を紹介したチュートリアル記事・動画が多数アップロードされていますのでご安心ください。
Spark AR Studioの使い方は、Spark AR Studio公式サイトでも学ぶことができます。英語ページですが、そう難しい英文ではないので、翻訳機能などを使えば問題なく読み進めることができますよ。
3. 作成したSpark ARの公開申請をする
Spark ARが完成したら、いよいよ公開申請です。公開申請にあたっては、次の項目などを設定する必要があります。
- ・Spark ARタイトル
- ・デモ画面
- ・アイコン
- ・サムネイル
- ・紹介文(英語で入力)
- ・エフェクトの公開日・公開終了日
公開申請から承認までには、おおよそ10営業日程度かかるとされています。希望公開日に間に合わせるためにも、早めに対応しておくことをおすすめします。
まとめ
Spark ARについて、その基本情報から作成公開手順まで、幅広くお伝えしてきました。企業による成功事例も複数ご紹介したので、Spark ARプロモーションの活用イメージも掴んでいただけたのではないでしょうか?改めて、お伝えした内容をおさらいしましょう。
- ・Spark ARとはFacebook社が提供しているARエフェクトのこと
- ・2019年には、世界中で10億人以上がSpark ARを体験
- ・AR広告市場は年々右肩上がりの傾向にあり、Spark ARをプロモーション活用する企業も増えている
- ・通常のプロモーションに比べて拡散性が高い
- ・興味関心・購買意欲の向上を促進できる
- ・購買プロセスのフェーズごとに適したプロモーション展開が可能
- ・アカウントフォローを通じて継続的な関係を構築できる
- ・アカウントへの親密度を上げやすい
- ・広告費がかからない
- ・使いたくなる・拡散したくなる仕掛けを意識する
- ・ユーザーを楽しませることを第一目的と考える
- ・Spark ARの特徴がひと目で分かるアイコン・サムネイルを設定する
この記事がSpark ARの理解につながり、Spark ARをプロモーション活用したいとお考えの方の参考書となりましたら幸いです。
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