スマートフォンやタブレット端末の普及と共に動画市場のシェア(*1)は拡大を続けています。GEM Standardの調査によると、2021年の動画市場規模は前年より19.0%増加しており、2026年には2021年の約1.5倍である7,241億円まで市場規模が成長すると予想されています。
現在、YouTubeには1分毎に約100時間分の動画が投稿されています。(*2)
これは動画1本の尺を5分とした場合、1時間ごとに72,000個の動画がアップされているという計算になります。
これほどの数の動画が投稿されていると、狙っているターゲットやユーザーが投稿した動画を必ずしも見てくれるとは限りません。
そこで近年注目されているのがVSEO対策です。
本記事では、VSEOの意味からVSEO対策をした方が良い理由、アルゴリズム、実際にどのように効果検証を行うかを網羅的に解説します。
・動画を上位表示させたい
・VSEOについて詳しく知りたい
という方は是非参考にしてみてください。
目次
VSEOとは
VSEO(Video Search Engine Optimization)とは「動画の検索エンジン最適化」という意味です。検索エンジンに動画を評価してもらうことで検索結果の上位表示を狙うことを指します。
VSEO対策を講じることで、毎分膨大な数投稿されている動画の中でユーザーに見つけてもらいやすくなり、見てもらう機会も増やすことが出来ます。
VSEO対策した方が良い理由
近年スマートフォン等やタブレット端末の普及と共に動画市場が拡大しています。それに伴い、テレビの代わりに動画を見て過ごす時間が多くなっています。株式会社SheepDogの調査(*3)によると20代の19%が1日3時間以上動画配信サービスを視聴しているというデータもあります。
このように動画の市場価値が上がっている中、動画投稿数も増加しています。多くの動画が投稿される中では、投稿した動画を視聴者に見つけてもらうということがとても重要になってきます。
投稿した動画を見つけてもらう方法として、YouTube広告等の広告を実施することも1つの方法としてありますが、VSEO対策をすることで見つけてもらえる可能性が高まるだけでなく、見てもらえる機会が増えることで再生数が伸び、サイトへの流入や認知獲得などマーケティング上の重要なKPIに結びつきます。
また最近では、GoogleやYahooの検索結果画面(以下、「SERPs」)は日々進化しています。以前までは、SERPsの上位にはリスティング広告やWebサイトのリンク、地図などが表示されることが主でしたが、現在はSERPsの上位に動画が表示されることも増えました。
例えば、「オルチャンメイク やり方」と調べるとメイク動画が上位に表示されます。これは、オルチャンメイクのやり方を調べる人はテキストで見るよりも動画で見る需要の方が高いと検索エンジンが判断しているからです。
より検索上位に表示させるVSEO対策が注目を集めています。
VSEOのアルゴリズム(仕組み)とは
YouTubeの検索結果の順位付けがされるアルゴリズム(仕組み)を理解しなくては対策を講じることは出来ません。
ここでは、VSEOのアルゴリズムについて解説していきます。
YouTubeの検索で重視する点は大きく「関連性・エンゲージメント・品質」の3つがあります。
これは、YouTubeヘルプページの「クリエイターを支援する YouTube の取り組みについて」にも詳しく記載されているので見てみてください。
本ページに書いてあることを簡単に説明すると、YouTubeで上位検索を目指すには以下の3つが重要という事が分かります。
①関連性
関連性は、タイトル、タグ、説明文、動画コンテンツが、ユーザーの検索クエリにどれだけ一致するかなど、さまざまな要因に基づいて評価します。
これは一般的なコンテンツSEOと同様にコンテンツ内容と質が重要となっています。
関連性の構成要素であるタイトル、タグ、説明文、目次(タイムスタンプ)、翻訳・字幕について詳しくみていきましょう。
タイトル
動画タイトルは記事タイトルと役割は基本的に同じで、文字数制限内で動画内容がしっかり分かるようなタイトルかつ、ユーザーの関心を引くようなキャッチーなタイトルにどれだけ出来るかにかかっています。例えばタイトル内に【】を入れて協調箇所を作ると目立つので関心を引きやすくなります。
また、人は左側から文字を読むため、タイトル内にキーワードを入れる場合はタイトルの左側に入れるのがおすすめです。タイトルの文字数は28文字~40文字が目安とされています。
タグ
YouTubeなどの動画配信サービスはタグによって動画コンテンツをカテゴライズしています。タグ検索をするユーザーも多いため、動画内容に即したタグを活用することでより狙っているターゲットに見つけてもらいやすくなります。
YouTubeでは動画に設定するタグと説明文内に設置できるハッシュタグがありますが、タグを付けすぎるのはYouTubeにスパム扱いされる可能性が高いので控えることをおすすめします。
説明文
現在のYouTubeのアルゴリズムでは動画の音声やビジュアルだけではコンテンツ内容を明確に把握することが難しいのでテキストで補ってあげる必要があり、説明文の内容もとても大切です。タイトルだけでなく、説明文の中にもキーワードを入れる事でより検索エンジンが動画コンテンツを理解しやすくなります。
ただし、キーワードを注力しすぎてユーザーが理解しにくい文章になってしまってはいけません。あくまでも、ユーザーに伝わるように簡潔で分かりやすい説明文にしましょう。
目次(タイムスタンプ)
動画の目次であるタイムスタンプは、動画内に表示されるタイムスタンプを押すと任意の場所まで移動できます。
作成した動画の中で特に見てもらいたい場所に設置することで視聴されやすくなるだけでなくユーザビリティーにも繋がるのでなるべく設定するようにしましょう。
翻訳・字幕
翻訳や字幕は文字情報として検索エンジンに認識されるため、VSEO対策において重要な要素です。
字幕を設定することで、目の不自由な方でも視聴ができたりとユーザビリティーが向上します。また、翻訳を設定することで海外からの視聴を見込むことができ、より視聴数を伸ばすことも出来るでしょう。
字幕は自動生成ツールでも対応出来ますので有効活用しましょう。
このようにアクセシビリティを向上するためにも関連性に関わる要素を満たしていくことは重要です。
②エンゲージメント
YouTubeはユーザーからのエンゲージメントシグナルの総計を考慮しています。
つまり、コメント数や総再生時間、高評価数、再生維持率などから動画に対するユーザーのエンゲージメントから動画の質を判断しているという事です。
例えば、再生維持率とはユーザーが動画をどれくらい見たかという意味です。1分間の動画を30秒間視聴したとしたら再生維持率は50%となります。
③品質
品質は、特定のトピックで専門性、権威性、信頼性を備えた優良チャンネルかどうかを判別します。
Google検索でもYMYL分野(ニュース、政治、医療などユーザーの金銭・生命に重大な影響を与える可能性があるトピック)のコンテンツには厳重な品質評価ガイドラインを設定し、低評価ページを上位に表示しないようなアルゴリズムになっています、YouTubeでも同様で、ニュース・政治・医療情報・科学情報など、信憑性や信頼性が特に重要となる分野では、高品質で信頼できるコンテンツが検索システムで優先されるようなアルゴリズムになっています。
VSEOの効果検証
施策を実施する際はKPIを設定して目標達成度を可視化することが大切です。
VSEOの施策を行う上でのKPIの指標やタブ毎のYouTubeアナリティクスの数値の見方など分析の仕方をみていきましょう。
VSEO実施の目的を大きく分けると「インプレッション数の向上」と「CTR(クリック率)の向上」があります。
YouTubeのインプレッションとは、YouTube動画のサムネイルがユーザーに表示された回数のことです。クリック率はサムネイルが表示された後にどのぐらいの割合のユーザーが動画を視聴したかを示します。
視聴者の目に留まるような魅力的なサムネイルや思わずクリックしたくなるようなタイトルを設定することでインプレッション数・CTRを上げることが可能です。例えば、タイトル内に具体的な数字を入れたり、動画の内容が分かるようなキーワードを入れることで興味関心をより引くことができます。
しかし、インプレッション数・CTR(クリック率)が増えることと動画を見てもらえることはイコールではありません。動画を見てもらうためには以下の指標もチェックする必要があります。
・視聴回数
視聴回数とは、動画が視聴された回数を示します。
インプレッションが増えても、視聴回数が増えなければ意味がありません。動画の長さを工夫したり、目次や説明で補足して動画をきちんとみてもらえるように工夫も必要です。
・ユニーク視聴者数
指定した期間中に動画を視聴したユーザーの推定数を示します。複数デバイスからの視聴や複数回の視聴をしていても、 1 人のユニーク視聴者としてカウントされます。
どれくらいのユーザーにアプローチすることが出来たか確認することが出来ます。
・総再生時間
動画が視聴された時間の合計を示します。視聴者が投稿した動画をどれくらいの時間見てくれているかによって視聴者の動画への温度感を確認することが出来ます。より長く動画を見てもらうためには、タイトルやサムネイルを工夫したり、動画投稿頻度を上げることで総再生時間を増やすといった対策が必要となります。
また、総再生時間を伸ばすためには、視聴維持率を上げることも大切です。視聴者維持率とは、動画がどこまで再生されたかを示すデータのことで、5分の動画が2.5分再生されたら視聴維持率は50%と計測されます。
アナリティクスで視聴者維持率が下がっているポイントを確認して改善しましょう。
これらの数値が悪いと思った際に、VSEOに影響する指標であるエンゲージメントやCTR、視聴者の属性などをアナリティクスで確認する方法をタブ毎にご紹介します。
YouTubeアナリティクスで見れる指標の紹介
●概要
概要では自分のチャンネルや動画のパフォーマンスの概要を確認できます。画面上には視聴回数や総再生時間、チャンネル登録者数、推定収益(YouTubeパートナープログラムに参加している場合のみ)が表示されます。
・通常のパフォーマンス: 最新の動画と、チャンネルの通常のパフォーマンスの比較
・人気の動画: 視聴回数による最新の動画ランキング
・リアルタイム: 過去48時間または60分間のパフォーマンス
・最新の動画: 最新の動画(10個)のパフォーマンス
・ストーリー: 最新のストーリーに基づく過去7日間のパフォーマンス
●リーチ
リーチでは、視聴者が自分の動画にどのように経由して訪れたかを確認出来ます。画面上にはインプレッション、インプレッションのクリック率、視聴回数、ユニーク視聴者数が表示されます。
リーチには次のレポートも表示されます。
・YouTubeの検索結果:視聴者を自分のコンテンツに誘導した検索キーワード。
・トラフィック ソースの種類: ユーザーが自分の動画を見つけた方法。
・インプレッションと総再生時間の関係:YouTubeで動画のサムネイルが表示された回数(インプレッション)、そのサムネイルから動画が再生された頻度(クリック率)、およびクリック率と総再生時間の関係。
・YouTubeの関連動画:他の動画の横や他の動画が再生された後に表示される関連動画と、動画の説明内のリンクからのトラフィック。
・YouTubeの再生リスト:最も視聴回数の多い自分の動画が含まれる再生リストからのトラフィック。
・外部サイト:自分のチャンネルの動画を埋め込んでいるかリンクしているウェブサイトやアプリ(Google検索やTwitterなどのSNS)からのトラフィック。
この情報を元にどの媒体を分析してどこを強化すべきか対策をしましょう。
●エンゲージメント
エンゲージメントでは総再生時間と平均視聴時間のデータからユーザーがどのくらい自分の動画を見ているかを確認できます。
・人気の動画:過去 28 日間で特に総再生時間が長い動画
・上位の再生リスト:過去 28 日間で特に総再生時間が長い再生リスト
・終了画面で人気の動画:過去 28 日間で特に効果的だった終了画面
・上位の終了画面要素タイプ:過去 28 日間で特に効果的だった終了画面要素タイプ
・上位の投稿:過去 28 日間で特に人気だったコミュニティ投稿
エンゲージメントは、投稿している動画の長さにも注目して分析しましょう。例えば、10秒の動画は放置しているだけで全て再生されていたという可能性も高く、平均視聴時間も長くなる可能性が高いです。
YouTubeでは5分以上の動画がコンテンツ内容としても評価されやすいので5分以上の動画で平均視聴時間も長ければ良い結果といえるでしょう。
●視聴者
視聴者では、自分の動画を見ている視聴者の国や性別といった概要を確認できます。画面上ではリピーターと新しい視聴者の数、ユニーク視聴者数、チャンネル登録者数、すべてのメンバーが表示されます。
特に年齢と性別を分析することで自分の動画のターゲットが狙えているのか、どこでズレが発生しているのかが明確になりコンテンツの方向性を修正することが出来るでしょう。
まとめ
動画配信サイトだけでなくGoogleでの通常の検索でも上位に表示させることができるため今やVSEOはユーザーに自分の動画を見てもらう上で欠かせない対策となっています。
せっかくの手間をかけて内容の良い動画を作れてもタイトル設定や効果検証がうまくいかず誰にも見られないと意味ないものになってしまいます。
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*1 「動画配信(VOD)市場規模」
*2 「1時間ごとに、YouTubeに投稿される動画の数は?」
*3 「YouTube見すぎ?20代の19%が1日3時間以上YouTubeを視聴と回答」